2024.05.21
20240521
なんということはないのですが。池田澄子さんという御歳88歳になられる女性の俳人をみなさんはご存知でしょうか。いや、私も詳しく存じ上げているわけではないのですけれど、そんな池田さんの代表的な俳句にこんな句があります。
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの
私、この句がこの世の中で一番好きな句です。なんてすてき。すてきでしょ? ジワジワくるでしょ? ご本人もとてもすてきでカッコイイ方ですので、「わたしもファン!」という方はきっとたくさんいらっしゃるかと思います。私、これは昔からなのですが、この句を何気なく思い出すたび、ふとしたときにいろいろな俳句と触れるたび、「あぁ、やっぱり俳句っていいな。私も池田さんに負けないような俳句が一句でもつくれないものかなあ」と、不遜にも思うわけです。
話は変わって、先日の日曜日。家族でいつもお世話になっているカメラマン・山口明さんの写真展へ伺ったことは書きましたけれども、そこでは山口さんの写真をはじめ、グループ展で参加されていた「わたなべよしこ」さん、「関愉宇太」さんの写真も展示されておりました。3名の方、それぞれの写真をゆっくりと拝見させていただいていて、「あぁ、やっぱり写真っていいな。スマホでもいいから、私もすてきな写真を撮りたいなあ」と、なんとなく思ったわけです。
そしてまた話は変わって、そんな写真展への道中、ドライブをしながら家族それぞれが好きな曲を交互にかけていくという遊びをしたことも書きましたけれども、息子や成瀬文子さんがかけた曲を聴いて、私がかけた曲もみんなが聴いているという立場で改めて聴いて、「あぁ、やっぱり音楽っていいな。私も人生で一曲くらいはいい曲を書けないもんかなあ」と、今さらながら思ったわけです。
そういえば。昨夏に家族で東京へマティス展を観に行った際。私はその頃、義父の薦めではじめて絵を描いていた頃で、「あぁ、やっぱり絵っていいな。あ、なるほどな。こうやって描いていけば自分でも描き続けられるかもしれない。家に帰ったら早速描くぞ」と、何かをつかんだような気がしたあの時もそんなことを思っていたのでした。
・・・はい。そんなことを私は日々思いながら、きょうもべつになんにもやってません。俳句もつくっていないし、スマホで撮った写真は一枚もないし、ギターも触っていないし、筆も握っていません。
たとえば何かをつくったとして、私はそれらを誰かに読んでほしい、見てほしい、聴いてほしい、届けたい、ということは(たぶん)なく、きっと「でへへへ」と自己満足をたのしむだけで充分なはずなのに、それなのに、「プロになるわけでも、なれるわけでもないしなぁ」という思いがどこかで邪魔をして、結局なんにもやってないような気がします。
思いついたらすぐに行動せよ。たとえばそんな言葉は耳にタコですし、妙なプレッシャーをかけんじゃねーよ、と、どちらかといえば苦手な言葉、苦手な発想なのですけれど、それでも、なんとなく、本当にさっき、今しがた、「きょうは何を書こうかねぇ」と思っていた際に、俳句も写真も音楽も絵も(あと、釣りも)「べつに下手でいいじゃん」が、ふっと身体のなかに入ってきた感じがしたのでした。そう思ったら、窓から見える空や外の景色がいつもよりもはっきりくっきり見えたように感じたわけです。夜だけど。夜なのに。
まぁ、なんということはないのですが、それでもどうせ何もやらない気がしないでもないのですが、そんなことを思ったのは日中の私の仕事場をアトリエに移したことで、スタッフのみんなと直接触れ合うことが多くなったからかもしれないなぁ、と、そんなふうに思ったのでありました。
◎【Today’s Memo】は平日の毎朝8時に更新。atelier naruse 代表・早川による、ちょっとしたエッセーのようなもの、です