20240513 | atelier naruse

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2024.05.13

20240513

 急に安部公房が読みたくなる。先日、大移動、大掃除を済ませた我が家の本はここ数年で最も整理されている状態になっているので簡単に見つかると思っていたのだけれど、どこにもない。いや、安部公房どころか、夏目漱石もあれがないこれがない。太宰治も芥川龍之介も数冊しかない。いわゆる近代日本文学の所持していると思っていた作品がこぞってない。いや、もしかすると、そもそも持っていなかったのかもしれない。

 誰かに貸したままなのか。それとも実家に送ってしまったのか。それとも私の人生に合計6回あった大きな引越しの際に何かの間違いで(気の迷いで)売ってしまったのか。あれこれと色々な記憶を辿ってゆくと、小説などを読みあさっていた高校から大学時代、おそらくそういった日本文学の名作は、図書館で借りてきたものを読んでいたような気がする、というところに答えが至った。この十数年、「我が家には、日本の文豪と呼ばれる作家の主要な小説は大体ある」と自信満々に思い込んでいたし、息子にもそんなふうに言っていたのだけれど、実はそうでなかったことがなんとなく恥ずかしい。なにより、文豪と呼ばれる作家の主要な小説は大体読んだ、という記憶も怪しくなってくる。実際、たとえば安部公房の『箱男』も読後感は覚えているのに、ストーリーの詳細は完全に朧げである。本当に読んでいたとしてもそれはもう30年ほども前の話なので当然といえば当然なのだけど、それはどこか所在ないような、自分の記憶が突然喪失してしまったような妙な感覚になっている。

 だが、これはチャンスであるかもしれない。ここのところ、どっぷりと小説にハマることがすっかりなくなっているけれど、あの時に読んだ小説をもう一度読む、もう一度買う、いや、はじめて買う、買い揃えていくという今後の楽しみに変えてみてはどうか。もしかすると、30年前に「おぉ、日本人すげぇ」と震えたあの感動をもう一度味わうことができるかもしれない。ついでに、「んー、わからん」「んー、登場人物の名前が覚えられん」と途中で読むのを辞める作品が立て続けに出てしまった結果、どこか苦手意識が生まれてから以降はとんと手を出していない海外文学の名作群も今なら楽しむことができるかもしれない。(『チボー家の人々』とか、本当に何度もトライして挫折した記憶がある。ちなみにこの作品も我が家の本棚になかった。やっぱり図書館で借りていたのだと思う)。

 とりあえず、安部公房の『箱男』か『カンガルー・ノート』を買おう。それから、どこへでも持ち歩くことができるための老眼鏡をもうひとつ買おう。

 そして、これまでお守りのように、何かの呪いのように自分のベッドを取り囲むようにしてなんとなく置いていた主にあだち充と高橋留美子のマンガは、このたびの我が家大移動、大掃除を機に無印良品で買ってきた大きなボックス2個に仕舞い込んだことを覚えておこう。でも、同じようにお守り的存在の柊あおい『星の瞳のシルエット』と『銀色のハーモニー』は今もまだベッドのそばに積んであるのが自分でもちょっと気持ち悪いよ。

◎【Today’s Memo】は平日の毎朝8時に更新。atelier naruse 代表・早川による、ちょっとしたエッセーのようなもの、です

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成瀬文子

What’s ‘the an’ ?

the an(ジ・アン)は、bokura co.,ltd. | atelier naruse の公式オンラインストアです。

the(定冠詞)と an(不定冠詞)を組み合わせたショップネーム。
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