たとえば、私は一人で片道4時間を超えるような長距離ドライブをすることはほぼない。年に1度あるかないかくらい。そもそもインドアな人間だし、車の運転は嫌いじゃないけれど好きでもない。景色を見るような余裕もないし、ただ運転をしているだけではすぐに眠くなってしまう。山道のようなひどい道路に入ってしまうと自分で運転をしながら車に酔うことだってある。「ドライブをするとストレス発散になる」という人のコメントを聞くこともあるけれど、私の場合はない。ストレス発散になりそうな、大声で歌を唄う、ということをしてみることもあるけれど、歌い終わるとクラっと目眩がするので控えている。はたまたドライブをしながら素晴らしいアイデアを思いつくようなことも、素晴らしいメロディーを思い浮かぶこともないから、私にとってのドライブは、あくまでも目的地へ辿り着くための交通手段としてのドライブになる。

　だから、運転中は音楽を聴くことが多い。というか、聴かないことはない。たまにラジオを流すこともあるけれど、やっぱりほとんど音楽を聴いている。ただ、一人での長距離ドライブとなるとすぐに違うアーティストの違う曲を聴きたくなるという癖のようなものがあるから、私の場合、長距離ドライブの音楽鑑賞はあまり向いていない。つくづく面倒くさい人間だと自分でも呆れる。

　どうしようかしらと10数年前に迷ったことがあって、その結果、私はひとつの答えを手にしている。それは、一人長距離ドライブの旅のお供は『ロングバケーション』が最適解であるということである。

　大滝詠一の名盤ではない。みなさんご存知、木村拓哉、山口智子主演、1996年の大ヒットドラマ『ロングバケーション』の DVD である。もちろん運転中に映像を観ることはないけれど、これまでに散々観てきた同ドラマだけあって、その場面はセリフを聞けば自動的に映像が流れる便利な脳味噌に仕上がっているので問題ない。

　そして、全11話。仮に1話を60分と単純計算してみると11時間。長距離ドライブでは、その行きと帰りにちょうど良い。渋滞などで運転予想時間がオーバーしたとしても11時間もあるのだから出発してから帰宅するまでに最終回を観終えることはほとんどないから新鮮な気持ちを維持できるほか、そもそも渋滞時は脳内ではない実際の映像を観ることができるという特典に代わることについても素晴らしい。

　ところで。こちらはキャンプ出発前夜の「27日（土）」に書いている。今、世間は連休真っ只中である。うっかりしていた。本当にうっかりしていた。連休中は高速道路が渋滞するという当たり前の事実を私は忘れがちである。きっと、「29日（月）」に帰宅した頃にはグッタリしているのだろう予測がネット上には溢れている。だから、大慌てでこちらを今書いているのである。正直、今、泣きそうである。キャンプになんぞ行きたくなくなってきている。私を構成するすべての DND が『インドア』と書かれた白旗を泣きながら振っている。ロングバケーションに『ロングバケーション』を車中で2回くらい観ることになりそうな感じであーる。

◎【Today’s Memo】は平日の毎朝8時に更新。atelier naruse 代表・早川による、ちょっとしたエッセーのようなもの、です