ここのところの我が家が夕食時に観ていた作品は、2020年の1月～3月にかけてNHKで放映されていたアニメ『映像研には手を出すな！』。（原作は、同名タイトルのマンガ作品。現在も『月刊！スピリッツ』で連載中です）。ちなみに、放映された期間は世間がコロナに騒ぎ出し、1回目の緊急事態宣言が行われるまでの、ちょうど、あのころ。なかなかセンセーショナルな期間だったわけですが、同作を観ると当時の空気感みたいなものが蘇ります。

　それはさておき、『映像研には手を出すな！』。ことほどさように放映当時も小4だった息子といっしょに家族みんなで観て、その面白さに毎週興奮をして大騒ぎしていましたが、先日ふいに息子が「映像研みよーや」と提案をするので「いいねー」と久しぶりに観てみたところ、やっぱり面白い。「めっちゃ面白かったけど、しかし、こんなにも面白かったけ？」と思ったくらい面白い。ここ数年のアニメと比較をしても、すくなくとも私にとっては圧倒的なものに感じました。ともあれ、その面白さに私は改めて面食らった次第でございます。

　あ、まったくご存知ない方にめちゃざっくりとしたストーリーをご紹介しますと、クセのある個性的な3人の女子高生がアニメーションを制作していく様子を描く、というもの。（めちゃざっくり）。いわゆる萌え系アニメとは一線を画した世界観やキャラクター設定は「アニメはちょっと苦手で」という方も含め、幅広い人が楽しめる作品ではないかしらと思います。

　ここで少し話は飛びますが、私はスタジオジブリ大好き人間。周囲に「ジブリすきぃ～」と公言をしていると「何の作品が好き？」と聞かれることが当然多くなるわけですが、私の場合、ジブリ作品そのものもさることながら、どちらかといえば、宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫、主にはこの3人がどういったアプローチでアニメ制作を行ってきたのか、というところに小さい頃からグッときていたタイプのファンです。

　で、話を戻しますと。この『映像研には手を出すな！』では、そんなジブリの3人（宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫）が、同作の主人公3人のキャラクター設定に少なくはない影響を与えているはずで、実際に作品内で描かれる彼女たちの言動はまさにジブリの3人のそれ（と私には見える）。そこに加えて、これまたとっても魅力的な『映像研には手を出すな！』の原作者である大童澄瞳（おおわらすみと）らしい視点や世界観やギャグといった “今の感性” が「これでもか！」と見事に放り込まれているから面白くならないわけがない。ちなみに彼は、自他共に認めるジブリオタクです。

　そして、忘れてはいけない。そんな原作の世界を実際のアニメーションにした湯浅政明監督。湯浅政明の作品はすぐに湯浅政明とわかるのですが、『映像研には手を出すな！』に関しては原作へのリスペクトが高いためなのか、そんな湯浅フレーバーが適度に抑えられていることが功を奏しつつ、それでも「こんなの湯浅じゃないとできねー」という演出がキラキラ光るベストアクトな一本になっている感じがします。ちなみに、私は湯浅政明も昔から大ファン。まぁ、そりゃあもう、たまらないわけです。

　そんなわけで説得力があるんだかないんだかわかりませんが。まだ観たことがないという方、「ジブリのドキュメンタリー好き！」という方も、ぜひ一度ご覧になってみて損はないかと思います。もちろん一度は見たことがあるという方も。久しぶりに観ると私のようにさらなる感動を味わえるやもしれません。ただ、サブスクで観るとすれば『U-NEXT』くらいなのかしら。（我が家は当時に録画しておいたもので視聴しました）。今はちょっと観にくい環境かもしれないのですが、ぜひ、オススメでございます。

◎【Today’s Memo】は平日の毎朝8時に更新。atelier naruse 代表・早川による、ちょっとしたエッセーのようなもの、です