いま、これを書きながら隣に置いてある iPad の TVer から、アレが流れている。夕食時、テレビで歌って踊る還暦の田原俊彦を見終わった後、カチカチと何気なくザッピングしていたとき、アレはふいにやってきた。事前に調べていたわけでもないのに、毎年、必ず、やっぱり、今年も、アレは我が家にやってきた。私たちはアレにぶち当たるようにできている。そういうふうにできている。何か大きなものに仕組まれている。そう思うほか、ない。

　画面の中では、いつものように大の大人が豪華なアスレチックをクリアしたり、クリアできなかったりで、くしゃくしゃの顔で笑って、ぐしゃぐしゃの顔で泣いている。本気で人生をかけている。だから私は今、ソレをみながら、例年のように、ちょっとひいて、ちょっと半笑いになっている。プスススス。

　でも、知っている。正気を保てているのは今だけだ。もうしばらくすれば、私は私でなくなる。「あーっ！」「もーっ！」「えーっ！」と叫ぶたび、家の中に手の指をかけることができるヘリのようなものがないかを探し出す、この時期だけの別人格が自分の中に生まれてくる。豪華なアスレチック、などと書いた数分前の自分を殴ってやりたい気分になるに決まっているのだ。

　嗚呼、『SASUKE』。その深淵なる響きよ。嗚呼、『SASUKE』。親愛なる熱き馬鹿な漢たち。嗚呼、『SASUKE』。完全制覇すると賞金200万円。嗚呼、『SASUKE』。応援する者、される者、そのリアクションすべてが、なんか全員キムタク。嗚呼、『SASUKE』。私が出場して「ええ。妻の文子と息子にファイナルステージをプレゼントしたいんで」と言ったら「いらん、いらん」と冷たく言われそう。嗚呼、『SASUKE』。嗚呼、『SASUKE』。ことしも終わろうとしているよ。クリアできなかったアイツらの分まで、オレたちの『SASUKE』、オレたちの2023年のファイナルステージをみんなで完全制覇、成し遂げようぜっ💪。だってさ、みんなの笑顔が見たいから。・・・は？

　ボコッ👊‼️ あ。いま、豪華なアスレチック、と書いた自分を含め成敗しました。出場者のみなさん、お慕い申しております。

（結局、書きはじめてから3時間経っちゃいました）

　そんなわけで。

　我が家のキャッツたちはおかげさまで完全復活。改めて、そのちっちゃいちっちゃい身体をテケテケピョコピョコさせながら、我が家のすみずみを兄妹で大冒険していらっしゃいます。まったくもって、ちっちゃな生きものたちにしか埋めることのできない心の隙間みたいなものが私のなかにもあったのだ、と、つくづく感じる年の瀬。

　さあ、2023年の【Today’s Memo】も、あすの更新でラストでございます。

◎【Today’s Memo】は平日の毎朝8時に更新。atelier naruse 代表・早川による、ちょっとしたエッセーのようなもの、です