人にはいわゆる「三大欲求」というものがあるそうですけれども。私の場合、突出している欲求は間違いなく「睡眠欲」です。「唯一欲」と言ってしまってもいい。
そもそも、なにをもって「欲」と定義するのか定かではありませんが、私は毎日最低でも6時間は寝ることができています。いや、7時間は寝ています。もしかすると、8時間は寝ているかもしれません。なんなら10時間を超える日も。
にもかかわらず。私の毎日はそれ以上の睡眠を両手を天に突き上げながら常に全身で求めています。
たっぷり眠って起きたとき。食事をしているとき。電話をしているとき。車を運転しているとき。釣りをしているとき。ずっとたのしみだった映画を観ているとき。大好きなあの子とデートをしているとき。
これを「欲」と呼ばずして、いったいなんと呼ぶのでしょう。「欲」以外のなにものでもありません。
いま、みなさんはこう思っているかもしれません。「わたしだって眠い」。「誰だって、眠い」。わかっています。しかしながら、嫌われる覚悟で申し上げるとするならば、私の睡眠欲はみなさんのそれと一線を画するものであると自負しています。
私の睡眠欲は、まるでスポットライトで浮かび上がった大きな舞台に一人すっくと立つバレリーナのように、私の脳内でその存在を燦然と輝かせながら、たった一人の観客である私に対し、くるりくるりと廻りながら「眠れ」と訴えてきます。そして、私の身体にある “睡眠欲センサー” のフォーカスも、いつだってそのシルエットをくっきりと捉えたまま決して離してくれません。
もちろん、このままでいいと思っているわけでもありません。エジソン、モーツァルト、明石家さんま、尾田栄一郎、デーブ・スペクター、ムツゴロウさん、etc。私の憧れ。ショートスリーパーたち。できることなら、“ショートスリーパー” と書かれた掛け軸を家に飾っていたい。ただ、我が家には掛け軸を飾る床の間がない。私は彼らのことを日々頭に思い浮かべては、自分と比較をし、うなだれ、床に着く毎日です。
合法的に適度な睡眠欲になる方法が、合法的にショートスリーパーになることができる方法が、どこかに落ちてはいないだろうか。
そうでなければ、きっと、私が人生の終焉を迎えるとき。遺す言葉はただひとつ。「私の人生、眠かった」。
しょーもない人生! ©︎粗品
◎【Today’s Memo】は平日の毎朝8時に更新。atelier naruse 代表・早川による、ちょっとしたエッセーのようなもの、です