第二十回 購入特典のお知らせ。

 みなさま。

子ども時代には、とかく「おおきくなったらなにになりたいの」と聞かれるものです。私も大人たちにそう聞かれましたらば、そのときに「おかあさんといっしょ」が好きなら歌のおにいさんになりたいだの、「あぶない刑事」にハマっていたなら刑事になりたいだの言っておりましタカ、たが、実のところ心から就きたい職業など本当はなかったように思います。だって、そんなのわかりませんもの。

そのようなことで就きたい職業はわからないものの、考えようによっては職業を選択することよりももっと具体的な夢を私は持っていました。それは、私の友達が、私の知らない誰かに「早川卓馬(←私です)?あぁ、アイツね。俺の同級生」なんてことを話したとき、それがちょっとした自慢になるような人物になっていたいという夢です。もう少しわかりやすくいえば、ちょっとした有名人になるという夢でした。

 もちろん、そんなことを言っちゃう子は、そんなふうにはならないのが世の常です。それはまだ子どもだった私ですら重々承知の介なことだったわけですが、それでもそう思っちゃうんだから仕方がないということで開き直り、陰ながら(君たちは私のことで将来自慢するのだよ)とほくそ笑む、非常に嫌な子ども時代、青春時代を私は日々過ごしていたわけです。

このように私は儚くも壮大な夢を幼きころに持っていたわけですが、それが大人になった今、まったく消えてしまっているかと問われたならば、実はそうでもありません。もちろん、「だってもう大人だぜ。自分のことはわきまえているつもりさ。馬鹿なことを聞きなさんな」と立派に言い放ちたいところではあるのですが、私はあの少々痛々しい子ども時代、青春時代に抱いた夢を今も持ち続けるという大変に残念なことになってしまっています。

 

そんなわけで、長くなりましたが今回の本題となります。ということは、です。前回にコマーシャルさせていただきましたこの度の出版は、私が幼きころに抱き、今なお捨てることのできないその夢を叶えることのできる可能性を秘めているのではないかと思うのです。そもそも、私のことを誰かに話してそれが自慢になるということは、私がうれしいことはもとより、それを話した方にとってもなにかしらのメリット、喜びがあるということです。

また、私は"私のことを誰かに自慢する人"を友達や同級生と想定していましたが、対象となる人物はその限りではないことをみなさまはすでにお気づきでしょう。私のことを私の知らない誰かに話してそれが自慢になるというのは、大雑把にいって、"私のことを自慢する人"が私のことを私が世に出る前から知っていることで成立します。そして、この度の出版に関する執筆依頼は、他ならぬこの「日記、猫か夫か。」を編集者の方が読んでいてくれたことがきっかけですから、執筆のスタイルはほとんどこのまま。ですから、この「日記、猫か夫か。」を読んでいただいているみなさまであれば、私のことを大いに自慢していただけることと思うのです。「ワタシ、ミスチルはデビュー前から知ってるんだよね」的な優越感を得られることは必至であると思うのです。

 

 しかしながら、みなさま。ここまで来て、私はあることに気がついてしまいました。先程私は、私のことを誰かに自慢するためには、みなさまが私のことを私が世に出る前から知っていることが前提であると書きました。ただし、自慢が成立するためにはそれだけでは必要十分ではなかったのです。

つまり、私のことを自慢しようと話した相手が私のことを知っていないと、実はお話にならない、なんの自慢にもならないということです。

なんということでしょう。私は、私がコラムニストとしてデビューさせていただくことにうつつを抜かし、本が出版されると同時にすっかり有名人になる気分でいたようです。まったく、私という人間は、ほとほと残念ではあります。

 

とはいえ、みなさま。あきらめてはいけません。みなさまが私のことを自慢するには、私のことを自慢しようと話した相手が私のことを知っていればよいのです。要するに、本が爆発的なヒットとなり、新聞の夕刊に出て、ラジオに出て、そこで番組のパーソナリティーの方とお友達になり、そのまたお友達であるアーティストと頻繁にお酒を酌み交わすようになったことで「笑っていいとも!」のテレフォンショッキングに出演すればよいのです。意外に簡単そうですね。

 

 とにもかくにも、みなさま。これまで「"日記、猫か夫か。"、なかなかいいんじゃない」と読んでいてくださったみなさま。来る20116月中旬、ピエ・ブックスより発売される『かんさい絵ことば辞典』をご購入いただくと、私のことを自慢できるという購入特典がもれなくついてくるということを念のためにお知らせさせていただきました。

 

 

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■買ってね、のコーナー

 

関西で使われることば、今はなつかしいことば約200語を

絵でたのしめる、かわいい本ができました。

 

『かんさい絵ことば辞典』

著/ニシワキタダシ コラム/早川卓馬【←夫です。私です】

 20116月中旬発売予定 定価 950円+税(ピエ・ブックス刊)

 

※ニシワキタダシさんHP http://homepage3.nifty.com/chanee/top/top.html