第五話 夫、サボタージュ。

 忙しい、忙しい。というわけでもなく、暇だ、暇だ。というわけでもない。それなのに、どうしてこんなに時間が空いてしまったのか。それは、忙しくもなく暇でもない、ちょうどいいペースで日々を過ごしていたからです。ちょうどいいペースというのは、どうも色々と怠けてしまいます。

 

 それはそうと、いつもたくさんのお便り、ありがとうございます。お便りが届くたび、園子さんに教えてもらい、有難い気持ちと、少しばかり申し訳ない気持ちと一緒に読ませていただいています。そして、なかには「そう思うのか」と驚くようなお便りもあります。例えば、「旦那様は、きっとトイレで本を読む方ですね」といったスピリチュアルな方。しかし、このお便りを下さったペンネーム「阿藤快と加藤あいは一字違い」さん(仮称)。あなたの推理は甘かった。私は、トイレの時間が尋常ではないほど早いのです。トイレの扉を開けるカチャという音と、カラカラとジャーが、ほぼ同時に響くほど早いのです。園子さんなどは、私のことをウ○チしないアイドルみたいな人だと今でも思っているのではないでしょうか。故に、本を読める時間など、あるはずもないのです。「私はトイレで本を読まないのではなく、読めないのだ」。いやはや、何とも含蓄のある言葉ですね。

 

 ここで、あることを忘れていたことに気がつきました。私は園子さんの夫ですが、それ以外の情報は何も提供していません。これは、かなりミステリアスな状況なのではないでしょうか。園子さんが私のあれこれについて多少は書いていたかも知れませんが、今これを読んでくださっているみなさん全員がそれを知っているなどと思うことは大きな勘違いというものです。そうなると、さて、私は一体誰なのでしょうか。敵か、味方か。正義か、悪か。男か、女か。おすぎか、ピーコか。

 いえ、もしかすると、私は園子さんの夫ですらないのかもしれませんよ。むしろ、私という人間はいない可能性だってあるのです。みなさんが私だと思っている人は実は成瀬文子さんで、自分で自分を「園子さんと呼んでみます」などと、恥ずかしいことを言っているのかもしれません。「どうして、そんなことをクルールがするの?」「そうよ! そんなこと、クルールはしない!」。おやおや、どうしてそんなことが言えるのですか。そもそもクルールとはフランス語で色という意味。あなたの知らない色にだって染まるのよ、私は。そう、このおすぎはね!

 

 今日は、エイプリルフール。

 私は年中、嘘ばかりついています。

 

ピーコ