日々
乗り物の忘れ物のコーナーでは 傘が多いそうですね。
雨が出かける時はふっていて 雨がやむと忘れてしまうんですかね
それは 男と女とどっちが多いんでしょうね
さて 今日は村上春樹さんの「遠い太鼓」の続きです。
それである日、僕はこちらからつかつかと犬の方に寄っていった。そして犬と僕とは正面からじっと睨み合った。僕が身をかがめて「んのやろー」という目付きで睨みつけると、犬のほうも「お、そーいう気か」という風にううううと低くうなりながら、睨み返してきた。僕もこんなに真剣に意識的に犬と喧嘩したのは初めてだったので、最初のうちどうなるものかいささか心配だったのだが、そのうちこれはこっちの勝ちだと確信した。犬の目の中にとまどいの影が見えたからである。僕の方から犬に向っていったことで犬は犬なりに混乱してとまどっていたのだ。こうなればあとは簡単である。案の定、五、六分睨み合ったあとで一瞬犬が目をそらせた。その一瞬を狙って、僕は十センチぐらいの至近距離から犬の鼻先めがけてあらん限りの大声で(もちろん日本語で)、
てめえ、ばかやろお、ふざけんじゃねえよ!
と怒鳴りつけた。それ以来その白犬は一切僕を追い掛けてこなくなった。ときどき僕のほうが冗談で追い掛けると逃げていくようになった。きっと怖かったんだろうな。でもやってみると、犬を追い掛けるというのは、けっこう面白いものだ。
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すごいわ、村上さん。
てめえ、ばかやろお、ふざけんじゃねえよ!十センチぐらいの至近距離から犬の鼻先めがけてあらん限りの大声で