
『月と六ペンス』
きのうはね 私のつくったペラポン(本)のこととかをほめてくれる人が3人もいて そういうときは自信もつくんですが 胃が痛くなるんです。これを自家中毒と自分はよんでいるんですけど 痛かったです。
赤玉を飲みました。
*
チアレは言うんですね
「ねえ、あの人に奥さんを見つけてあげたのはこの私なのよ」
「しかしあいつには細君がいたんですよ」
「あの人もそう言ったわ。でも私は言ってやったの、奥さんはイギリスにいるんでしょ、イギリスなんてここからみりゃ地の果てじゃないの、ってね」
「たしかにそうだ」と私は答えた。
「あの人は絵具やタバコや金がなくなると、二、三か月おきぐらいにパペーテに姿を見せては、野良犬みたいにふらついていた。私はなんだかあわれになってね。その頃うちに、部屋の掃除などをしているアタという女の子がいました。私といくらか血のつながりがあるし、両親も死んだので、私が引き取っていたわけ。ストリックランドは時々うちにやって来ては、みのある食事をたっぷり食べたり、ボーイの一人とチェスをしたりしていました。あの人が来ると、アタがあの人をじっと見ているのに私は気がついた。で、私は好きなのかいと聞いてみると、とても好きと言うんです。御存知のように、ああいう娘達は白人と関係するのを喜ぶんですよ」
「土人の娘ですか?」
「白人の血は一滴もまじっちゃいません。ところで、アタに話したあとで、ストリックランドを呼びにやって、私はこういいました。『ストリックランドさん、あんたももう腰を据えてもいい頃でしょ。その年配で、海岸付近の娘っ子達とふざけ廻るんじゃないわ。ああいうのは性の悪い女ばかりだから、あんなのと付合っていると、どうせろくなことにはなりませんよ。あんたはお金もないし、仕事も一月か二月しか続きはしない。もう今では、誰一人あんたを雇うものはいないわ。そりゃあんたは奥地で土人のだれかれの家で暮せる、やつらはおれが白人だからよろこんで置いてくれると言うけれど、そんなことは白人としてすべきことじゃないわ。いいこと、まあお聞きなさいな、ストリックランドさん』」
「『ところでね、あんたアタと結婚したらどう?あの子はいい子だし、まだほんの十七。他の娘達のように
誰かれの見境なく関係することはなかったし、ーそりゃあ、船長とか一等航海士とはあったけれど、土人とは一度も関係したことはないし。あの子なかなか自尊心があるでしょ? オアフ号の事務長さんはこの前いらした時、ここらの島であんないい子ははじめてだ、って言ってらしたわ。あの娘にしたってそろそろ身を固める時よ、おまけに、船長さんとか一等航海士さん達は時々相手を変えたがるんでね。私は娘達をいつまでも引きとめておかないことにしています。アタはあんたが半島にいらっしゃるちょっと前に、タラヴァオの近くにちょっとした土地を自分のものにしたから、今の相場のコブラで、充分らくに暮せるでしょう。家もあるし、好きなだけ絵を描いている暇もある。どうこの案は?』」
「その時よ、あの人がイギリスに妻がいるって言ったのは。『おやおやストリックランドさん、他の人達だってどこかに女房が居る人達ばかりよ、大概の人はそれだからこそ、ここらの島へやって来るのよ。アタはわけのわかった娘だから、市長さんの前で結婚式をあげることなんて考えちゃいません。あの子はプロテスタントです。プロテスタントの人達はその点カトリックの人達みたいな考え方はしませんしね」
「するとあの人は『だが、アタはなんていうだろう?』って言うから、『あの娘はどうやらあんたに惚れているらしいわ。あんたさえよければあの子には異存はないの。呼びましょうか?』
「アタは来ました。アタは笑っていましたが、少しはにかんでいるのが私にはわかりました。ストリックランドはただ黙ってアタを見つめました」
「きれいな娘ですか」と私がきいた。
「まんざれでもないわ。あなたはあの娘の絵をごらんになったはずですよ。あの人はアタを何度も何度も描いていましたもの、パレオを着ているのや、何も着てないのや。そうねかなりきれいだったわ。それに料理も知っていました。私がじかに仕込みましたから。ストリックランドは私の申し出を考えている様子でしたから。私はこう言いました。『私はかなりいい給料を上げていたし、アタはそれを貯金しています。それに、アタの知り合いの船長さんや一等航海士さん達からも時々ちょっとしたものをもらいました。もうかれこれ数百フランたまっているでしょう』
ストリックランドは大きな赤ひげを引っぱって、笑いました。
『どうだね、アタ、おれを夫に持ちたいかい?』
アタは何とも答えずにくすくすと笑っていました。
『おれはお前をぶつぞ』
『ぶたれてこそ、あなたに愛されているとわかるんです』アタは答えました」
チアレは「私は二人に言っておきました。道がついている限り私の馬車に載せてってもらいなさい、それから先も長いこと歩かなけりゃならないんだからね、と。アタの土地は山の凹みのちょうど向こう側でした。二人は夜明けに出発しましたが、二人と一緒に行かせたボーイは翌日まで帰って来ませんでした。
そう、こうしてストリックランドは結婚したんです」
(そうなんですね。まあ、白人達はこの土地の人達をこういうふうにあつかっていたんですね。そして
それがあたり前だと現地の人達も受け止めている)(さっそくアタを画集の中で探さなきゃ)