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モームさん

スキャン4801.jpeg『月と六ペンス』

 衣裳屋よりも彫刻家の方に強く訴えそうな姿体だった。茶色でふさふさとした髪は、あっさりと結ってある。顔は非常に白く、目鼻立ちは人目をひくほどではないが整っていた。静かな灰色の目をしている。もう少しというところで美人になりそこなっている。美人になりそこねたのなら、可愛いかというと、そうでもない。しかしストルーヴがシャルダン風だと言ったのはまんざら理由のないことではなかった。夫人を見ていると不思議と、あの偉大な画家が不滅の生命を与えた、例の屋内帽をかぶりエプロンをつけた感じのいい主婦を思い出す。家事にも精神的意義を与えるかのように、家事という儀式をとりおこないながら、なべかまの間でまめまめしく、しかも落着いて立ち働いている彼女の姿を想像することができた。頭のいい女だとも思わないし、人をおもしろがらすなどということもまずなかろう。しかし落着いたひたむきな態度の中に、何か私の興味をそそるものがあった。控え目な態度には神秘さがなくもなかった。何故ダーク・ストルーヴなんかと結婚したのだろうかと思った。控え目な態度には神秘さがなくもなかった。イギリス人ではあるが、どういう女なのか正確にはつかめなかった、どういう社会層の出身か、どういう生い立ちか、又、結婚前どういう生活をしていたのかも明らかでない。ごく口数が少ないが、話す時は快い声で話すし、態度は自然だった。
 今仕事をやっているのかと、私はストルーヴにたずねた。
「やっているかだって?今迄にない好調さだよ」
 私達はアトリエに腰かけていた。彼は画架にのせてある描きかけの絵の方へ手を振った。私は少しぎくりとした。彼の今描いている絵は、イタリア人の百姓一群が、カンパーニア特有の衣裳を着て、ローマ教会の石段にいこっているものだった。
「これが今描いている絵なのかい?」
「うん。ローマにいる時同様、どこでもモデルには不自由しない」
「とても美しい絵じゃありません?」とストルーヴ夫人が言った。
「僕の愚妻は、僕のことを偉大なる芸術家だと思っているのさ」と彼が言った。
 彼は言い訳がましく声を立てて笑ったが、内心の喜びは隠せなかった。彼はしばらく絵を眺めていた。他人の仕事に対してはあれほど正確であり因襲的でない彼の批評眼も、自分自身に対しては、信じられないほどの陳腐な下品なもので満足してしまうとは実に不思議だ。
「もっと他のもお目にかけたら?」夫人が言った。
「見せようか?」
 あれほど友人達からひやかされ馬鹿にされて苦しみながらも、人にほめられることが好きで、他愛なく自己満足してしまう彼は、いつも自分の絵を人に見せずにはいられなかった。玉はじきをして遊んでいる二人のちりじっ毛のイタリアの男の子の絵を持ち出してきた。
「可愛いじゃありません?」ストルーヴ夫人が言った。
 それからもっと他の絵も見せてくれた。結局彼は、パリに来ても、ローマで何年も描き続けて来たのと全く同様の、陳腐な、あまりにも見えすいて絵画的なものを描いていたのだ。どれもこれもうそであり、いい加減であり、まやかしである。そのくせこのダーク・ストルーヴほど、正直でまじめで率直な人間はいないのだ。誰がこの矛盾を解くことができよう?
 どうしてそんなことをきこうという気になったのかわからないがー
「ねえ、ひよっとすると君はチャールズ・ストリックランドっていう画家に出会ったことがないかな?」



ストルーヴがはたして誰なのか?さらにストルーヴフ人は衣裳屋よりも彫刻家の方に強く訴えそうな姿体だった。茶色でふさふさした髪は、あっさりと結ってある。顔は非常に白く、目鼻立ちは一目をひくほどではないが整っていた。静かな灰色の目をしている。もう少しというところで美人になりそこなっている。

モームさん なに この表現は。どんな女やろ うまいわー

あの偉大な画家が・・ええとこの画家のことを思い出せなかったら いかんわ、ええっとフエルメール
例の屋内帽をかぶりエプロンをつけた感じのいい主婦を思い出す、とあります
ま この奥さんはこのくらいにして ストローヴについて
彼は陳腐なあまりにも見えすいて絵画的なものを描いていた。どれもこれもうそであり、いい加減であり、まやかしである。そのくせこのダーク・ストルーヴほど、正直でまじめで率直な人間はいないのだ。誰がこの矛盾を説くことができよう?

こんな矛盾 人間だからあるんでしょうけど 算数のようには解けませんね

私が本の中で人探しをしている間に ふっと 
著者はゴーギャン(チャールズ・ストリックランド)を語らせる相手として、こんな人物をわざわざ作ったんじゃないかと 思い始めたりして。

しかし こんな自分のあやふやさは 昔とちっとも変わってないんですね、自分がいうのもなんですけど。確かめもせず、想像をふくらませて。
若い頃、大学で卒論を書いているとき その時は気にもしていなかったんですけど その時に読んだ本に痛く感動して(クローニン)それをほめちぎってかいたんです。なんてタイトルだったかなあ。 
あの担当の先生の苦笑いは 本物の苦笑いやったんやと。
で この段階では 苦笑い期です、はい。でも読んでいきますね。

チューリップ、ずっとそばにいて観察しつづけたことはありませんから 室内で花瓶に入れて
かざっていて はじめて こんなにぱあー!っと開くんだと 
知らないこといっぱいあるなあ


《 2021.04.11 Sun  _  読書の時間 》