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モームさん

スキャン4796.jpeg『月と六ペンス』

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 その後の様子を見ると、ストリックランド夫人はなかなかしっかり者だということがわかる。
夫人は内心いかに苦しんでいようが、表面には出さなかった。世間の人というものは、不幸せの話にはじきにあきてしまうもので、愁嘆場はよろこんで避けたがるものだということを、ちゃんと見抜いていた。外出するときはいつも=夫人の不運対する同情から、夫人の友達達はしきりに夫人をもてなしたがった=夫人は完璧な態度をとった。勇気があった、但しあまり目立たない程度に。ほがらかでもあった、ただしずうずうしくない程度に。そして自分の心配事について話し合うよりも、他人の心配事に耳を傾ける方に熱心な様子だった。夫のことを話す時はいつも同情をこめて話した。夫に対する夫人の態度には私も最初のうち戸惑った。ある日夫人は私にこう言った_
「あのね、チャールズが独りだっておっしゃいましたけど、あれは間ちがっていらしたのよ。誰ってことは申し上げられませんけど、いろんな筋から伺ったお話によりますと、主人は独りで英国を離れたのではないことがわかりましたの」
「そうだとすれば、、御主人は足取りを隠す大名人ですな」
 夫人は目をそらし、かすかに頬を染めた。
「私のいう意味は、もしどなたかがそのことについてお話しになった時、主人が誰かと駆落したとおっしゃっても、否定なさらないでいただきたいんですの」
「勿論否定しませんとも」
 夫人はまるでそんなことはさして重大とも思っていないとでもいうような調子で話題を変えた。間もなく奇妙な噂が夫人の友人間に伝わっているのを発見した。噂によると、チャールズ・ストリックランドは、英国で上演したバレーの中で見染めたフランス人の踊子にうつつをぬかし、その踊子と手に手を取ってパリへ行った、というのである。いったいどうしてそんな噂が立ったのかわからなかったが、実に不思議なことに、その噂がもとで、ストリックランド夫人に対して同情がうんと集まり、又同時に、少なからず夫人の信望が高まったことだ。夫人がやろうと決心した職業にも、これがなかなか役立った。マックアンドルー大佐が、夫人は一文なしになると言った時まんざら誇張していたわけでもなかったのだ。夫人はできるだけ早く生活費をかせがなくてはならなかった。夫人は大勢の作家と付合っているから、それを活かそうと決心した。そして時を移さず速記とタイプを習い始めた。教育があるおかげで、波以上に有能なタイピストになれそうだし、事情が事情なので夫人の依頼は相手の心に強く訴えた。友人たちは仕事を持って行ってあげると約束したし、更に自分の友人全部に夫人を推薦する労までとってくれや。
 マックアンドルー大佐夫妻は子供がない上に裕福だったから、子供達の世話をみることにした。だからストリックランド夫人は自分一人を養えばいいことになった。夫人は今迄の部屋を貸し、家具を売り払った。ウエストミンスターの小じんまりした二間続きの部屋に落着き、新たに世間と直面することになった。夫人は実に有能だったから、この冒険もきっと成功するだろうとと思われた。

えっ,何か夫人 希望がわいて来ましたね。
ストリックランドがバレーの踊子にうつつを抜かしているという噂が立てば、実に不思議なことに、その噂がもとで、夫人に対する同情がうんと集まり、又同時に、少なからず夫人の信望が集まったという話。
噂も時にはいいあんばいにはたらくものですね。夫人は大勢の作家と付合っているから、それを活かそうと決心しますね。速記とタイプを習いはじめます。教育があるおかげで、並以上に有能なタイピストになれそうだし。事情が事情だけに 夫人の依頼は相手の心に強く訴えたわけで、友人たちがすすんで労をとってくれますね。子供達の世話は子供達のいないマックアンドルー夫妻が
ストリックランドが「どうにかなるさ」と言っていましたが そのとおりになりそうじゃないですか。

というところですが、この夫人は世間のことをよく見抜いていたとありますね。世間の人というものは、不幸せの話にはじきにあきてしまうもので、愁嘆場はよろこんで避けたがるものだということを
こたわざでもありましたね(でてこない)
夫人は完璧な態度をとった。勇気があった。但しあまり目立たない程度に。ほがらかでもあった、但しずうずうしくない程度に。そして自分の心配事について話し合うよりも、他人の心配事に耳を傾ける方に熱心な様子だった。
いやあ こういう態度って なかなかとれないです おみごと!夫人は40歳にはなっていませんよね。
えっ、こういう話って 参考にできる人あり できない人ありでしょうが
これって だいぶ前の小説です

布時代の作品です。あのころは自分の「もちごま」を布に貼り付けようとしていました。そして今はその布を再び広げて 更に別の「もちごま」を置いてみます。 
「縫い付けるということ」は 「貼り付けるということ」はやめにして おくだけ。
ものが 自分はとても好きで いつでも遊ぶ用意はできているのです。 
《 2021.04.05 Mon  _  読書の時間 》