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モームさん

スキャン4808.jpeg「月と六ペンス』

「おれに不賛成を唱えないのが当然さ。君は見下げ果てた奴だからな」
「おそらくだからこそ、あなたは僕に気安さを感じるんでしょう」と私もやり返した。

彼の微笑はどう描写したらいいのか、そのやり方がわかるといいのだが。魅力のある微笑かどうかは私には何とも言えないが、その微笑は彼の顔を輝かせ、ふだんは陰鬱な彼の顔つきを変え、まんざら根性曲がりでもない悪意の表情を与える。ゆっくりうごく微笑で、目にはじまり、時には終わりも目のことがある。非常に肉感的で、残酷でもなければ親切でもない、どっちかといえば好色のサター(ギリシャ神話の、バッカスの従者で半人半獣のの森の神の一人。酒と女が大好物)の冷酷な歓喜を想わせる。

*いったいどういう風な微笑なんでしょうね。

「パリに来てから恋愛はしなかったんですか?」
「そういうくだらんことに費やす時間はなかった。恋愛と芸術と両立できるほ程、人生は長くないからね」
「見たところ世捨人のようじゃない」
「そういったことにはすべてへどが出そうになる」
「人間性って厄介なしろものでしょう?」
「何故おれのことをクスクス笑うんだい?」
「そりゃ、あなたのことを信じないからさ」
「じゃ君は大馬鹿だ」
「僕をだまそうとしてとして何の益がある?」
「なんのことだい?」
「じゃ言おう。おそらく数カ月の間はそういう問題は君の頭に浮かぶことはなかったろう。そしてそういったことは永遠に縁を切ったと自分自身を納得することができただろう。君は自由をよろこんだ。そして遂に自分の魂を自分のものだと言えるようになったと感じる。頭を星の中につっ込んで歩いていたのだと気がつく。そしてその泥沼の中にころげ廻りたいと思う。するとある女を見つける。無教養な下卑た下劣な女、セックスのおぞましさをどぎつく身につけたけだもののような女。そして君はその女の上に野生の動物のようにとびかかる。怒りで盲目になるまで酒を呑む」
「妙に思えるかもしれんが言おう。それが済むと、君はこの上もなく澄み切った感じがする。肉体から離脱した精神だけのような気がする。霊的な気がする。そしてまるで手ざわりのあるあるもののように美をつかむことができるような気がする。そして、そよ風とも、或は葉の中に侵入して木とも、或は川の玉虫色とも、霊的なしたしい交わりを感じる。神になったような気がする。そういう気持ちを僕に説明してくれないか?」
 彼は私が言い終わるまで私の目にくい入るように見入っていたが、やがて目をそらした彼の顔には不思議な表情があった。人間が拷問のために死ぬ時は、きっとあんな表情をするのにちがいないと思った。彼は何も言わなかった。わたしたちの会話もこれまでだ、と私は悟った。

本を1ページ1ページ読む、ここのところはもっとしっかり読んでみたい、そうするとやっぱりそこの所を打ってしまいます。ストリックランドがみせる ほほえみ どんなだろうとそこのところをたどってみたくなりませんか? 彼がストリックランドに聞いてみたい男と女のことなど。若い彼ストリックランドとの会話。 

《 2021.04.19 Mon  _  読書の時間 》