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モームさん

スキャン4777.jpeg『月と六ペンス』サマセット・モーム著 角川書店 昭和33年

 入口は店の側面にあった。開けっぱなしになっていて、中に入ってすぐのところに「事務所は二階」と書いてあった。狭い階段を上がると、踊り場のところに詰め所のようなものがあった。ガラスで囲ってあって、中には机が一つと椅子が二脚あった。その外にベンチがある。おそらくこの上で夜警が窮屈な夜を過ごすのであろう。誰もいなかったが、呼鈴の下に「給仕」と書いてあった。呼鈴を鳴らすと、間もなく給仕が出てきた。うさんくさそうな目とふてくされた顔つきの若者だった。シャツ姿で室内ばきをはいていた。
 なんということなしに私はできるだけさりげない調子で質問した。
「もしやストリックランドという方がここに住んではいないでしょうか?」
「三十二号室。七階です」
 あまりにびっくりしてしまったので、一瞬、答えも出なかった。
「今、いらっしゃるのでしょうか?」
 給仕は事務所の掲示板を見た。
「鍵を置いてってありません。上がってごらんなさい」
 ついでだ、もう一つ訊いてやれ、という気になった
「奥さんも御一緒ですか?」
「お一人ですよ」

「お一人ですよ」
もうここで この作家は ほんとに そつのない質問をするもんだなあと
ここに言葉で導くまでの文が 小説というのは この間の文章が書けるという事なんだなあと
いえね 自分が小説家になろうというわけじゃないんですが なぜか
自分のことを べらべらしゃべるのとは ちがうなあと。 その場の空気とか登場人物のそぶりだとか。

今の季節は卒業式だとか入学式だとか ありますね
これは大学のお兄さん 肩パットとボタンと木のきれはし。
ときに なぜこの小説と関係ない所があるのかを説明をしなくてはね。 サマセット・モームの『月と六ペンス』は一度は読んでみたかった小説。
上の写真と短いこの添え書きは これは私のやってきたことです。

《 2021.03.17 Wed  _  読書の時間 》