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モームさん

スキャン4778.jpeg『月と六ペンス』

 私が階段を上がってゆくのを、給仕はうさんくさそうに見送っていた。階段は暗く、風通しが悪かった。胸の悪くなるような、かび臭いにおいがした。階段を三曲り上ったところで、部屋着姿の髪をもじゃもじゃにした女が戸を開けて、私が通りすぎるのを黙って見つめていた。ようやく七階にたどりついた、そして三十二号室の戸を叩いた。部屋の中で音がしたかと思うと、戸が少し開かれた。チャールズ・ストリックランドが目の前に立っていた。彼は黙っていた。私が誰だかわからないんだな、と思った。
 私は名前を告げた。つとめてほがらかな態度をとろうとした。
「覚えていらっしゃらないでしょう。今年の七月、お宅の晩餐にお招きいただいた者です」
「お入りなさい」彼は快活に言った。「よく来ましたね。お掛けなさい」
 私は中に入った。ごく小ぽけな部屋で、フランス人がルイ・フイリップ風と読んでいるスタイルの家具がぎゅうづめにつまっていた。大きな木製のベッドの上には大きく波を打った赤い羽ぶとんがかけられていたし、大きな洋服だんす、丸テーブル、ごく小さい洗面器台、つめ物をして赤い横うね織の布でおおった椅子が二つ。どれもこれも汚れて、みすぼらしかった。マックアンドルー大佐がいかにも心得顔に描写したような放らつなぜいたくさをにおわすようなものは何一つなかった。ストリックランドが一つの椅子にのせてあった服を床にほうり出したので、私はその椅子に腰かけた。
「どんな御用ですか?」と彼はたずねた。
 小さな部屋で見るストリックランドは、私の記憶している彼より更に大きく感じた。古いノーフォク・ジャケットを着ているし、数日ひげも剃っていないらしい。最後に会った時彼は小ぎれいにしていたが窮屈そうに見えた。ところが、むさくるしく、櫛もろくろく宛てていない今の方が、全くのびのびとくつろいでいるように見える。私がかねて用意して来た文句を言えば、ストリックランドはいったいどういうふうに受け取るだろうか。
「あなたの奥さんの代りとして伺いました」
「ちょうど、夕食前の一杯をやりに行こうとしていたところです。一緒にどうです?アブサンは好きですか?」
「飲めます」
「じゃ、行きましょう」
 彼はブラシをかける必要が大いにありそうな山高帽子をかぶった。

チャールズ・ストリックランドが出てきますね
入れてもらった部屋は どれもこれもみすぼらしくてきたなかった
夫人や大佐の予想とはかなりかけはなれていたのですね
ひげもそらず服装も古いノーフォ・ジャケット
しかし今の方が、のびのびとくつろいでいるように見える

子供が子供のときに描いた絵が出てきましたよ。迷路とよんでいて 何枚も描いていました
迷路は たどり着くものなのか 迷うものなのか 何故夢中にさせるのか
子供の時期のものは 充分ふしぎがってもいいよと言われているようで
《 2021.03.18 Thu  _  読書の時間 》