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モームさん

スキャン4774.jpeg『月と六ペンス』

 ストリックランド夫人が世間の噂を気にするとは、私はいささか寒けを覚えた。
その頃の私は、女の生活の中で他人の意見がいかに大きな役割を演じているかを知らなかったらだ。女の最も深刻な感情にすら、不まじめな影が一筋うつるのは、このためである。 
 ストリックランドが泊っている場所はわかっていた。相棒がストリックランドの銀行宛にかんかんに怒った手紙を送った中に、居場所を秘密にしている事をなじった。すると、ストリックランドは、皮肉とユーモアをまじえた返事に、相棒がどこへ行けば自分を発見できるか正確な場所を知らせてよこしたのだ。明らかに、ホテルずまいをしているらしかった。
「ホテルの名はきいていませんけれど、フレッドがよく知っています。とても贅沢なホテルですって」とストリックランド夫人は言った。
 夫人は暗い表情で頬を赤らめた。夫が贅をつくした続きの部屋に腰を落着け、あちこちの粋なレストランで夕食をし、昼は競馬に、夕方は芝居といった暮らしをしている様子を思い画いたのだろう。
「あの年齢になって、続きっこありませんわ。何といっても、もう四十ですもの。若い人ならまあしょうがないでしょうが、あの年配で、しかもそろそろ一人前になろうとしている子供まで居るというのに、おそろしいことです。体だって保ちませんわ」
 夫人の中で怒りと苦悩が闘っていた。
「あの人に言って下さい。私達の家庭があの人の帰りを待ちわびていると。何一つ以前と変わっているものはないのに、そのくせ、何もかもが変ってしまっている。あの人なしでは、私は生きて行けない。自殺した方がましです。昔のことを話してやって下さい。二人で共に苦労して来たことを全部話してやって下さい。子供達がお父さんの事をたずねたら、何と言いきかせたらいいのでしょう?あの人の部屋は、あの人が出て行ったときのままになっています。あの人の帰りを待っています。私達はみんなあの人の帰りを待っています」
 今になってやっと夫人は私がどう言うべきかを正確に教えてくれた。ストリックランドが言い出しそうなあらゆる意見に対して念のいった答えを私に授けてくれた。
「私のためにできるだけのことをして下さいますわね?」夫人の言い方は哀れだった。「私がどんな状態におかれているか、あの人に話してやって下さい」
 夫人は、私の力の及ぶかぎりあらゆる手段をつかって、ストリックランドの同情心に訴えてほしいのだ。夫人は心ゆくまで泣いていた。私はひどく心を動かされた。ストリックランドの覚めた仕打ちに腹が立った。
そこで、彼を連れ帰るため全力を尽すことを約束した。翌々日パリへ行き、何か収穫がある迄パリにとどまる事に同意した。それから、夜も更けたし、二人とも心労でぐったりしたので、私は別れを告げた。

ストリックランドの居場所は わかりましたね。
夫人は彼にあらゆる手段やことばでもって 夫に自分の所に帰ってくるように説得を依頼しました。
彼もストリックランドに対する冷たい仕打ちに怒っています
さてどうなるのでしょうね

フリーマーケットで服を見つけて来ますと ボタンを付け加えたりしました
着ていて 体に合わない 肩のこるものは あきらめました。基準はそういったところなんです。
《 2021.03.11 Thu  _  読書の時間 》