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モームさん

スキャン4766.jpeg『月と六ペンス』

 夫人は腰かけた。私はなんと言ったらいいのかまるっきりわからなかった。私には何の関わりもない事柄にふれるのは、なんだかきまりが悪かった。その頃の私は、女性がとかく陥りやすい罪悪、つまりよろこんで耳を傾けてくれる人となら誰とでも自分の秘事について話し合いたいというやむにやまれぬ感情が女性にあることを知らなかったからだ。ストリックランド夫人は自分を落着かそうと努力している様子だった。
「みなさんはこの事を噂しています?」
 夫人の家庭内の不幸を私が逐一知っているときめてかかっているのには、ぎくりとさせられた。
「なにぶん帰ったばかりで。会った人っていえばローズ・ウオータフオドだけなんですから」
 ストリックランド夫人は手を叩いた。
「あの人が言ったとおりをを教えて下さいな」そして、私が言い淀んでいると、なお言い張った。
「ぜひとも知りたいんですの」
「人の噂なんていい加減なものですからね。それにあの人の話はあまりあてにならないでしょう?あなたの御主人があなたを棄てたって言っていましたけど」
「それだけ?」
 ローズ・ウオータフォドが別れぎわに簡易食堂の娘のことにふれた文句を、ここにくり返す気にはなれなかった。私は嘘をついた。
「連れがいるってことは、何も言ってませんでした?」
「いいえ」
「それさえうかがえばいいんです」
 私はどうしたらいいのか少しとまどったが、とにかく、今こそ帰るべきだと悟った。私はストリックランド夫人と握手を交わす時、何かお役に立つ事ができたら大変うれしいのだが、と言った。夫人は淋しくほほえんだ。
「ありがとうございます。でもどなたがなにをして下さっても、どうにもなりませんのよ」
 お気の毒にと口に出すのは、どうもきまりが悪くてならなかったので、別れを告げようと大佐の方へ向いた。大佐は私の手を取らなかった。
「わしも帰るところです。ヴィクトリア通りを歩かれるのなら、一緒に行きましょう」
「結構です。じゃまいりましょう」と私は言った。

ローズ・ウオータフオドはおしゃべりな 噂好きなおばさんなんでしたね
こうしていろんな人物の話を読んでいきますと 性格やらがいろいろあってこそ 小説は面白くなっていくんですね。まず 配役をきめなくてはね
あれ 何の話でしたっけ。それで大佐と彼は一緒に帰るのでしょうか
「結構です」はおことわりのことばなんですよね 「じゃまいりましょう」と続くので 気になります
次ぎの所でわかりますよね。

「スカーフはできる、あめる」と思ったときのスカーフシリーズの首巻きです。
何年かぶりに取り出してみますとよかないですか?
《 2021.03.03 Wed  _  読書の時間 》