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モームさん

スキャン4763.jpeg『月と六ペンス』
 最期に浮かんだ考えは、何事もなかったかのように訪問して、お目にかかりたいがご都合はいかがですかと女中を通じてきかせることだった。こうすれば、いやなら私を追い返す機会を与えることになる。然し前以って用意しておいた文句を女中に告げた時、全くどぎまぎしてしまって、暗い老化で返事を待つ間、ありったけの勇気をふるい起してかろうじて逃げ出さずにすんだくらいだ。女中が戻ってきた。私が興奮していたせいか、女中のそぶりがいかにも家庭内の悲劇を知りつくして言うというようにうけとれた。
「どうぞこちらへ」と女中が言った。
 そのあとについて客間へ入った。日よけが一部閉まっていたので、室内は暗く、ストリックランド夫人は光を背にして坐っていた。義兄のマックアンドルー大佐が暖炉の前で、燃えてもいない火に背中をかざして立っていた。私には、自分の登場が実に場ちがいな感じがした。私の訪問は彼等にとって不意打ちだったに違いない、そして、ストリックランド夫人が私を中に通したのも、約束の日を延期するのを忘れていたため、しかたがないというところだったのだろう。大佐は邪魔者が入って腹を立てていたらしい。
「伺ってお邪魔じゃなかったんでしょうか」私は何気ないふうを装って言った。
「いいえ、お待ちしていましたのよ。今すぐアンがお茶を持ってきますわ」暗い部屋の中でさえ、ストリックランド夫人の顔が涙ですっかりはれぼったくなっているのがいやおうなしに目に入った。夫人の皮膚はふだんでもあまりいい色つやをしていたためしがないが、今日は土色をしていた。
「兄を覚えていらっしゃいますでしょう?宅の晩餐会の時にお会いになりましたわね、休暇の初まるちょっと前に」
 大佐と私は握手をした。あまりにどぎまぎしてしまって、何を話していいのかわからなかったが、ストリックランド夫人が加勢をしてくれた。夫人は私が夏の間何をしていたかをたずねた。この加勢を得たおかげで、お茶の運ばれる迄の間、何とか話をつないでゆけた。大佐はウイスキー・ソーダを注文した。
「あんたも飲んだ方がいいよ、エイミ」
 と大佐が言った。
「いいえお茶にしますわ」
 これが、何か厄介な事が起っていることをにおわす最初の徴候だった。

ふむ。 夫人はエイミというんでしたか。
いろいろ考えながら彼は ストリックランド夫人を訪ねるのですが そこには義兄のマックアンドルー大佐が夫人といました。泣きはらした夫人それでも彼に気を使ってくれます。

もっきんの「ら」バラの花をおってくれたのは孫のはなちゃん
ラララから始まる歌

《 2021.02.28 Sun  _  読書の時間 》