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モームさん

スキャン4762.jpeg『月と六ペンス』

女史は私にちらっと二章を投げると、歯医者に行く約束があると言い張って、颯爽と歩み去った。私は悲しむより興味をそそられた。その頃の私には人生体験といってもじかに味わうのがわずかしかなかったから、小説の中で読んだのと同じような事件が知人の間で起こるのに出くわして興奮をおぼえた。年月を経た今では、知人の間でそういうたぐいの事件がおこってもなれっこになってしまったが。しかし私は興味をそそられると同時に、いささか度肝をぬかれた。ストリックランドはたしか四十な筈だ、その年齢になって、男が恋愛事件に首をつっ込むとは、胸クソ悪い話だと私は思った。ごく若い頃にありがちの横柄な考え方で、私は男が恋愛しても馬鹿げて見えないのは、最高、三十五をもって限度としていた。このニュースはまた私個人にとってもちょっと困りものだった。というのは、田舎からストリックランド夫人に宛てて手紙を出した中に、ロンドンへ帰ることを知らせると同時に、おことわりがなければ、しかじかの日に伺って御一緒にお茶をいただきたいと書き添えておいた。その日が今日なのだ。しかもストリックランド夫人からは何とも言って来ない。私に会いたいのだろうか、会いたくないのだろうか?ちょうど心が乱れている時だったので、
私の手紙のことは忘れてしまったということも充分考えられる。おそらく行かない方が利口だろう。或はこうも考えられる、夫人はこの事件を人に知られたくないかもしれない、そうであれば、この奇妙なニュースが私の耳にも届いていることをにおわすのは、無考えも甚しいかもしれない。善良な夫人の感情を傷つけはしないだろうかという怖れと、邪魔になりはしないだろうかという怖れとの板ばさみになっていた。夫人は苦しんでいるにちがいない、助けてあげようにもあげられない苦痛を見るにはしのびない。しかし心の中では、夫人がこの事件をどんな風に受けとっているか見たいという気持ちがなくもなかった、そんな気持ちを自分でも少し恥かしいと思いはしたが。

「おそらく行かない方が利口だろう」
テレビで その時代の武士などについて 心のうちを探ってみる というようなところがあります。
心のうちにわけ入ってみれば ですね。
「私に合いたいのだろうか,会いたくないんだろうか」ことがことだけに いやはや やきもきしますよね。

この服やアクセサリーを見て下さいよ
なにかをつくってみるのには みなさんは 材料探しからはじまるのでしょうか。自分の場合 手許に現れた材料はかぎりなくあり それとあれをくっつけて つくっていたのです。
これを身につけるには けっこう緊張が伴うんですよね。作るたのしみはあるんですがね。

《 2021.02.27 Sat  _  読書の時間 》