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モームさん

スキャン4761.jpeg『月と六ペンス』

 その後に起こったすべてのことをじっくりとふり返ってみると、私の頭が鈍いために、チャールズ・ストリックランドの中に少なくとも並の人間とちがうものを何か見ぬくことが出来なかったのではなかろうかと自問してみた。或はそうかもしれない。そのころから今までの年月の間に、人間というものがかなりわかったつもりだが、それにしても仮に初めてストリックランド家の人達と会った時、既にいまのように経験を積んでいたとしても、彼等を違ったように判断したとは思えない。しかし人間とは計り難いものということを学んだ今ならば、あの年の秋の初めにロンドンへ帰った時私の耳に達したニュースを聞いても、あれほど驚きはしなかったろう。
 帰ってから丸一日もたたぬうちに、ジャーミン通りでローズ。ウオータフッドに出会った。
「とてもほがらかでいきいきしていますね。何かあったんですか?」と私がきいた。
 女史はほほえんだ。その目は私にはなじみの、腹に一もつありそうな輝きをうかべていた。ということは、女史が一人の友人について何かスキャンダルを耳にしたので、女流作家としての全本能が活発に働いている証拠だった。
「チャールズ・ストリックランドにはお会いになったんだわね?」
 女史の顔のみならず、体全体から、敏捷な感じを受けた。私はうなずいた。さてはあの哀れな男、株式取引所で除名処分にされたのかな、それともバスにでもひかれたのかな、と思った。
「おそろしいことじゃない?あの人ったら、奥さんを捨てて逃げたのよ」
ウオーターフォド女史はジャーミン通りのへり石の上ではこの話題について正しい批判を下すことはできないと感じたにちがいない。だから、芸術家らしく、事実だけをむき出しに私に叩きつけて、こまかいことは知らないと言い渡した。そんなとるにたらない事情のために、女史が話の細部を話すことができないのだろ
うと察するのは、女史を見損なうも甚だしい。私にはそんなことはできなかった。しかし、女史は頑固に言い張った。女史はそう答えてから、両肩をひょいとすぼめるとこうつけ足した。「きっとどこか中央の方の簡易食堂で、若い子がつとめ口をやめたんでしょ」

ローズ・ウオータフォドは
「おそろしいことじゃない?あの人ったら、奥さんを捨てて逃げたのよ」と チャールズ・ストリックランドのことをいいますね。
「きっとどこか中央の方の簡易食堂で、若い子がつとめ口をやめたんでしょ」
ああ えらいことになりましたねえ。あの申し分のなさそうに見えたストリックランド家が大変なことになっている。

しかし人間とは計り難いものということを学んだ今ならば、あの年の秋の初めにロンドンへ帰った時私の耳に達したニュースを聞いても、あれほど驚きはしなかったろう。とも言っていますね。何年か後の話ですね。

このややこしい服を見て下さい。毛糸の服だって自分で編んだからこうなっているのですが 着ることだって出来ます。お隣のコートは着物発です。どちらもだいぶ前のものですが 年をとると案外 着てみようと思ったりできるのです。そいで 変った服やなあと言われることもなく つまりなんなんでしょうね。

《 2021.02.26 Fri  _  読書の時間 》