NEKO美術館 成瀬憲子

このバラの花が

いったい誰にもらったものなのか　それは思い出せるのです

これが　わからなくなったら　やばいわなあと思っています

ともだちのUさんです　

彼女はいま百才になろうというおかあさんと　むすめさんと　結構の猫たちと暮らしています

同じ関西出身という事もあって　いっしょにはなすと　「ちょっとちょっと　あんた　どないしてるん」から

はじまります　「そんでな」ではなしは　水平にながれるばかり

水平思考ってありましたっけ？　

彼女の人形作りは　だいぶんまえのことかもしれませんが　とてもいいのです

その人形の服が　とても素敵なんですが　「このまま　人間の服に拡大できないの？」と聞きますと

「それはできない」と言います　わたしはそれが不思議なのです

Uさんのうちは　さるがむれをなして　通る事があって　お父ちゃんもお母ちゃんも子どもも　いっせいに

通るそうなんです　それも　植えてある野菜やくだものなどをいっしょにもっていってしまうそうなんです

そんなことされて　だまってるの　そう聞きたいところなんですが　おおさわぎしなにので　わたしもだまっています

大騒ぎするのは階段で足を踏み外した時だとか　そんなときです

去るに関しては　山の麓でくらすというのも　たいがいじゃないですよね

私が　「よだれがたらーんと右くちのはしから出て来るねん」と心配そうに言いますと

「そんなん　私なんか　よだれがでないのよ」ときます　それは歯医者さんでわかるのだそうです

若い子が　よだれが多すぎてというのを聞いてて　よだれにも　今聞いただけでも　三つもあるンやなあ

そう思います　どれが大変なのか　ここでわからなくなるわけです

同じぐらいの年齢の　この友達は　上には上の大変がある事を　教えてくれるようなもので　たよりになるのです

美しいバラの花を前にして　よだれの話など　どうかと思いますが