ーどんな場所ですか
◆中学、高校時代は深夜の応接間。シューマンやブラームスのレコードを
聴いた。大学を卒業、就職して忙しくなると、満員電車で(ひとり)になること
を覚えた。目を開けて立っているのに、自分の世界に浸る。乗り過ごしです。
ー老いても時間を忘れさせてくれるものは?
◆....海だと思う。いまも気が向くと日本海を見に行く。大阪から列車で二時間。
雪が降り、凪いでいるときがいい。めちゃくちゃ寒いけど、小さな船をだしてもらう。
海は船の周りだけ濃い緑色。あとは雪のカーテンの向こう、灰色の空と境もなくなり雲の中を滑るよう。先に何かあるのか想像できない。彼岸にまで続いている気さえする。
現実には大陸があるし、海の中は原子力潜水艦が行き交っていたりするんですけれど。
高村薫
ずいぶん前の新聞記事の切り抜きです
自分のこの絵も 大きな絵の切り抜きです
どこか文がないかなあと
いままでのファイルを探していると この高村薫さんの言葉が出てきました
切り抜きなので 前後がはっきりしないんですけど
ーめちゃくちゃ寒い日本海
ー 雪のカーテンの向こう 灰色の空との境もなくなり、雲の中を
滑るよう 先に何かあるのか想像できない 彼岸まで続いている気さえする
想像してみる 寒すぎるわ
高村薫さんはこんなふうな体験をして
自分をふるいたたせて 書いているんだなあ