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１９９０年ごろ
この村ですれちがったおばあさんの思い出
私が自転車にのっていたころだから １９９０年ぐらいかもしれない
私はこの村に来た時は車の免許を取れていなかった
おばあさんとは 買い物に近くのスーパーに自転車で行く時に
たまたまであったのだ
そのおばあさんは 野良着で ほっかむりをしていて そのうえにきいろい
麦わらぼうしをかぶっていた
私は いまはおばあさんだけど おばあさんにであうたび この人は
娘時代 どんな顔をしていたのだろう と想像してみる事がある
このおばあさんは とてもかわいらしい ほんのりあかいほっぺをした
娘さんだったのだろうと思った
「げんきですねえ」とおばあさんに声をかけると
「ええ げんきじゃねえけれども 田んぼを見に行くですよ つまらんもんでねえ」
と寂しそうな笑いをみせた
やせている
手押し車のすみっこに 菊の花が数本 さしてある
思い出した このまえ おばあさんの家でお葬式があった
きっとおじいさんが亡くなったのだろう
「じゃあまたね」
自転車を走らせた
この村では おばあさんにたまに出会う
私は 大阪という まったくちがったところから やってきたので
前からの知り合いというわけにはいかない
でもそれで気楽に 話しかけられる
おばあさんも 忙しいねえさんたちとちがって 歩みもゆっくりしていて
話しかけやすい
何年も前の できごとと 今が交差する
《 2019.11.27 Wed _ 思い出 》