こころ 先生と遺書 夏目漱石 つづき
家に帰ってくるたびに「私」は悲しいのですね
初冬の寒さとわびしさとが、私のからだに食い込むような感じがしました。
私はふとにぎやかな所へ行きたくなったのです。幅わずか一、二尺しかない
ぬかるんだ狭い坂道で 私はKとばったり出くわすのです
そしてそのうしろに女性の姿が はじめはよく見えなかったのですが
お嬢さんだったのです
私はお嬢さんに 道を譲り
そのあとは 私はどこへ行っていいか自分にもわからなくなるのです
どこにいってもおもしろくないような心持ちがするのです
Kに向かってお嬢さんと一緒に出たのかと聞きました
わー 小説家はひっぱるのですねえ
いや 本人は その事を認めたくなかったりして こういうふうになるのかもしれません
まわりは みんなきっとわかっているのでしょう
本人だけ こうなのでしょう