こころ 両親と私 夏目漱石 つづき
兄と「私」は蚊帳のなかで 話をしている
学校を出た祝いなど できなくて良かったよ おれ(兄)のときは 村人が酒を呑んでさわいで 父が 酒をついで回る そんなこと 結構だよねと
兄弟は そう仲がいいわけではなかった 小さいうちはよく喧嘩をし 弟の「私」はよく泣かされた 大学も専門が違っていた 遠くから兄をながめて動物的だと思っていた
そういうようなわけで 兄は近くなかった
(動物的って どんなことをいってるんだろう)
しかし久しぶりにこうして落ち合ってみると、兄弟の優しい心持ちがどこからか自然に
わいてでた。ふたりに共通な父、その父が死のうとしている枕もとで、兄と私は握手したのであった。
「いったい家の財産はどうなっているんだろう」
ここであの先生の言った言葉がでてくる
*
人の思考は 自然に優しい気持ちが思いがけず発生したり 別の思考が飛び出して来たりします
父のできごとがなければ そうたやすく会うこともないのですから こういう風なことは起こらないのでしょう
「いったい家の財産はどうなっているのだろう」これだって こういうときには発生します なにもかもが それぞれのところから でてきますね
夏目漱石というこの「こころ」の作者は こころの変化を まるで人間の景色を描くように 書いていませんか 絵の具で言えば 水彩かな なんちゃってね