who am ?I

PAGE TOP

  • 04
  • 03

こころ 夏目漱石

「こころ」夏目漱石 先生と私 つづき

29

 「ありがとう。脂(やに)がこびりついてやしませんか」
 「きれいに落ちました」
 「この羽織はついこないだこしらえたばかりなんだよ。だからむやみによごして帰ると、妻に(さい)しかられるからね。ありがとう」
 二人はまただらだら坂の中途にある家(うち)の前へ来た。はいる時にもだれもいる景色のに見えなかった縁に、おかみさんが、十五、六の娘を相手に、糸巻きへ糸を巻きつけていた。二人は大きな金魚鉢の横から、「どうもおじゃまをしました」と挨拶した。おかみさんは「いいえおかまい申しもいたしませんで」と礼を返したあと、さっき子供にやった白銅の礼を述べた。
 門口を出て二、三町来た時、私はついに先生に向かって口をきった。
 「さきほど先生の言われた、人間はだれでもいざというまぎわに悪人になるんだという意味ですね。あれはどういう意味ですか」
 「意味といって、深い意味もありません。ーつまり事実なんですよ。理窟じゃないんだ」
 「事実でさしつかえありませんが、私の伺いたいのは、いざというまぎわという意味なんです。いったいどんな場合をさすのですか」
 先生は笑いだした。あたかも時機の過ぎた今、もう熱心に説明するはりあいがないといったふうに。
 「金さ君。金を見るとどんな君子でも悪人になるのさ」
 私には先生の返事があまりに平凡すぎてつまらなかった。先生が調子に乗らないごとく、私も拍子抜けの気味であった。私はすましてさっさと歩きだした。いきおい先生は少しおくれがちになった。先生はあとから「おいおい」と声をかけた。
 「そらみたまえ」
 「何をですか」
 「君の気分だって、私の返事一つですぐ変るじゃないか」
 待ち合わせるために振り向いて立ち留まった私の顔を見て、先生はこう言った。


このおかしさは なんなんでしょうね
しかし 「金がすべてじゃない」とお説教するより 人のこういったところが おかしくて わかりやすいじゃないですか。
作者夏目漱石は こんなことを描ける人だったとは。胃潰瘍で苦しい時は いらいらしますよね。ごちゃまぜにしたらいけませんね。 
「吾輩は猫である」テレビでドラマで見たことがありますが(こういう言い方をしていいのですか?)やっぱり おもしろい というよりは おかしい。
でも夏目漱石がお札になっていたり ここまでだと こんな先生がお札になるなんて どういうこと? となるじゃありませんか。あっそうだ 作者と登場人物をいっしょくたにしてますね。でも 小説というものはフィクションなんだけれども 私小説とは区別するほうがいいんでしょうか。
後々の人はこの人をお札にするなんてことをするから 難しいことを書く人だと 思ってしまうんじゃないですか。
お客さん こんなことを思うのは 私だけですか

《 2019.04.03 Wed  _  読書の時間 》