who am ?I

PAGE TOP

  • 03
  • 24

こころ 夏目漱石

「こころ」 夏目漱石 先生と私 つづき

27

先生は平生から(へいぜい)むしろ質素な服装(なり)をしていた。それに家内は小人数であった。したがって住宅もけっして広くはなかった。けれどもその生活の物質的に豊かなことは、内輪にはいり込まない私の目にさえ明らかであった。要するに先生の暮らしは贅沢といえないまでも、あたじけなく切り詰めた無弾力性のものではなかった。
 「そうでしょう」と私は言った。
 「そりゃそのくらいの金はあるさ。けれどもけっして財産家じゃありません。財産家ならもっと大きな家でも造るさ」
 この時先生は起き上がって、縁台の上にあぐらをかいていたが、こう言い終わると、竹の杖の先で地面の上へ円のようなものを描きはじめた。それがすむと、今度はステッキを突き刺すようにまっすぐに立てた。
 「これでももとは財産家なんだがなあ」
 先生の言葉は半分独言(ひとりごと)のようであった。それですぐあとについて行きそこなった私は、つい黙っていた。


財産家ではないけれども 贅沢といえないまでも、あじけなく切り詰めた無断力性のものではなかった。

これはどんな絵にしますか? だんだん 頭の中では文章が絵になっていきますよ
私は頭のなかだけですけど 外に出すと 画用紙なんぞのうえに描くと たのしいですよ きっと。

《 2019.03.24 Sun  _  読書の時間 》