「こころ」夏目漱石 先生と私 つづき
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「なぜという訳もありませんが。....つまりいくら本を読んでもそれほどえらくならないと思うせいでしょう。それから....」
「それから、まだあるんですか」
「まだあるというほどの理由でもないが、以前はね、人の前へ出たり、人に聞かれたりして知らないと恥のようにきまりが悪かったものだが、近ごろは知らないということが、それほどの恥でないように見え出したものだから、ついむりにも本をよんでみようという元気が出なくなったのでしょう。まあ早くいえば老い込んだのです」
先生の言葉はむしろ平静であった。世間に背中を向けた人の苦味を帯びていなかっただけに、私にはそれほどのてごたえもなかった。私は先生を老い込んだとも思わない代りに、偉いとも感心せずに帰った。
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「なぜという訳でもありませんが。...つまりいくら本を読んでもそれほどえらくならないと思うせいでしょう」
そういうふうに本を読むのか 言われてみればそういうところもあるのかなぁ と
「以前はね、人の前へ出たり、人に聞かれたりして知らないと恥のようにきまりが悪かったものだが、近ごろは知らないということがあ、それほどの恥でないように見えだしたものだから、ついむりにも本をよんでみようという元気が出なくなったのでしょう。まあ早くいえば老い込んだのです」
知らないことは恥 そうか いえね 知らないから教えてもらうと会話も増えるじゃないぐらいに思っていた自分は これらの訳がおもしろいのでした
先生は それまで けっこう本を読んだりしていた人なんですよね
「世間に背中を向けた人の苦味をおびていなかっただけに」
かっこいいわ