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こころ 夏目漱石

「こころ」夏目漱石 先生と私 つづき

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 私の選択した問題は先生の専門と縁故の近いものであった。私がかってその選択について先生の意見を尋ねた時、先生はいいでしょうと言った。狼狽した気味の私は、さっそく先生のところへ出かけて、私の読まなければならない参考書を聞いた。先生は自分の知っているかぎりの知識を、快よく私に与えてくれたうえに、必要の書物を二、三冊貸そうと言った。しかし先生はこの点についてごうも私を指導する任に当ろうとしなかった。
 「近ごろはあんまり書物を読まないから、新しい事は知りませんよ。学校の先生に聞いたほうがいいでしょう」
 先生は一時非常の読書家であったが、その後どういう訳か、まえほどこの方面に興味が働かなくなったようだと、かって奥さんから聞いたことがあるのを、私はその時ふと思い出した。私は論文をよそにして、そぞろに口を開いた。
 「先生はなぜもとのように書物に興味をもちえないんですか」


しかし先生はこの点についてごうも私を指導する任に当ろうとはしなかった。
ごうも この言葉 始めて読みました
そぞろに口を開いた
そぞろに この言葉も

《 2019.03.12 Tue  _  読書の時間 》