「こころ」 夏目漱石 先生と私 つづき
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父の病気はさいわい現状維持のままで、少しも悪いほうへ進む模様は見えなかった。念のためにわざわざ遠くから相当の医者を招いたりして、慎重に診察してもらっても、やはり私の知っている以外に異常は認められなかった。私は冬休みの尽きる少しまえに国を立つことにした。立つと言い出すと、人情は妙なもので、父も母も反対した。
「もう帰るのかい、まだ早いじゃないか」と母が言った。
「まだ四、五日いても間に合うんだろう」と父が言った。
私は自分のきめた出立の日を動かさなかった。
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こういうことは どこにでも おなじかたちであるんじゃないかと 思うほど
似ています。
出立の日をかえない 子供 子供が行く日となると 急に別れを惜しむような事を思ってしまう親
私はそれを何度も経験して その一時を いつもそうなので そういうところが親子には
あるのだと 思ったことでした。かといって 日にちを 親の言う通りに伸ばしてみたところで 変化はないのでしょう。
こういう場面を書いた夏目漱石も 同じ体験をしたのでしょうか
自分の体験にひきつけてみる 私の癖ですね これは小説なのですね