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大きい荷物 吉行淳之介

「大きい荷物」吉行淳之介 つづき


 太軸太字のモンブランは、七、八年前からときどき使っているが、その万年筆でメモ帖に書いた記憶はない。もし書いたとしても、太軸のもののほうが筆圧がしぜんに強くなるので、筆跡ですぐに分る。シェーファーの時期は長く、五本くらいを使い継いだだろう。太字か普通の太さで、細字のものは使わなかったので、そこも手がかりになる。博多の街で買った臙脂色の(臙脂色)シェーファーは、値段は安かったが書きやすかった。万年筆にも当たり外れがある。銀の軸のシェーファーはとても書きやすくて、「当った」と喜んでいたが、
間もなく失くしてしまった。ボクシングの世界チャンピオン戦観戦記を書くために蔵前国技館に出かけて、終わって外に出るまでの混雑のあいだに落してしまった。夏で、上衣なしで、ズボンのポケットの縁に挟んでおいたのだから、失くなるのが当たり前のようなものである。
 白い紙のところには、
『密室。
 ホテルのボーイ。
 トランク』
 と、三行に分けて記してあり、少し離れてもう一行、
『前言訂正ケロリン』
 いずれも、今となっては何のことか、見当もつかない。


この作者のことにそって 書こうとしても なぜか 自分のことを思い出していることに気付く。
モンブランは 確か外国にツアーで行く友達に「モンブランの万年筆買ってきて」と「お土産は何がいい?」と彼女が言うので そうお願いした。
ともだちは どこにいって そのモンブランを買ってきてくれたのだろう
日本で買うのより安いという ところだったと思う
「とちお(旧姓) 高かったのよ どうしてくれんのよ」
そういって にらまれた
きゃっぷには星マークがついていて この万年筆は 邪険に扱っちゃあいけないよな
そう思って 大切に使った
シェーファーのペンは 確かに安かった。太字で これで 日記の大半は このぺんだった。すりきれるようにして ぺんは 使い古されたが また 同じのを買った。
作者と同じコースだ。
はじめて外国旅行に行ったとき それはイギリスだったんだけど 文房具屋があったので
ふらりと入った。そうしたら シェーファーのペンが丸い籠の中にいっぱいはいっていた
ので驚いた。それで 5本ぐらい買ったのだった。自分の性格からすると ぜんぶほしいぐらいだった。 なぜそうしなかったのかというと 日本で500円ぐらいの物だけど
もしかして イギリスでは それを下回る値段じゃないのかもしれない そう考えたのだ。あんまり安いと そういう風に考えたりする 自分もおかしい。それに私はイギリスの通貨が 日本円に計算できなかったのだ。いつも支払いは 両手に貨幣をのせて
とってもらった。
その五本のシェーファーを ブルーのインク ブラックのインクと使い分けて 本当にうれしかった。イギリス旅行の成果は このペンたちと リサイクルショップでのスタンプ(木でできた古いもの)だった。

さて この数年前の私の誕生日に 娘に シェーファーのペンをと頼んだ
久しぶりに 使いたくなったのだ。5本のペンたちは すでに 使い古されていた
5本ほど 安いからと お願いした
そうしたら そんな安いのはないよ けっこうするよ そう言われてしまった
娘からのメールで見てみると 本当だった。高い
2本に そういうわけでなったんだけど もうそれは かってのシェーファーではなく
モンブランと同じように緊張するペンとなっている。 
それと あんなに書いていた日記が
読み返すだけの物になり シェーファーは 少し遠くなった

『密室 ホテルのボーイ トランク』
『前言訂正ケロリン』
いずれも、今となっては何のことか、見当もつかない

ほんとほんと
しかし 読書の時間は 自分の時間になってしまいつつある
5本のシェーファーも 当たり外れがあった
なにもかもいっしょといいたいところだけど そこの部分だけで
自分は 親しみを感じているだけなのに 
この本にそって話を進めろよ のりぞー 
《 2018.12.07 Fri  _  読書の時間 》