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大きい荷物

吉行淳之介 大きい荷物 つづき


腕時計を見ると、理髪店の予約時刻が迫っている。それは病院を出たときには
分っていたのだが、運転手のせいで忘れていた。
 信号が青になると、急ぎ足になって向こう側に渡り、ホテルの横側の出入り口の扉を押した。階段を降りて、地下アーケイドの奥まで歩き、理髪店の椅子に座った。
 目の前の大きな鏡に映っている自分を見て、
 「やれやれ」とおもう。
 それは、いつものことだ。年を取ったし、いくつかの病気の気配も滲み出ている。それに、急いだので心臓の鼓動がはやい。
 理髪店の小山さんが近寄ってくるのが、鏡に映った。
「おや、息が苦しそうですね」
「わかるかね」
「肩が上下に動いてますよ」
「なるほど。それにしても、三ヶ月ぶりだ」
「まさか三ヶ月は経ってはいないでしょう」
「丁度、三ヶ月だ。うしろだけは長くなって鬱陶しいんだが、出てくるのが
億劫でね」
 長いつき合いなので、言葉遣いがいくぶん乱暴になる....。
 小山さんは、私より二十は年下だろうが、去年の秋から眼鏡をかけるようになった。
「おや、老眼かね」
「いえいえ、でも、こまかい仕事ですからね」
「つまり、軽い老眼になったわけだ」
 そのとき、そういう会話があったのを覚えている。
 ホテルで仕事をしなくなってから、五年ほど経つ。その前の十年間は、
一カ月のうちの半分くらいこのホテルにいた。
 その時に小山さんを発見した。櫛と鋏だけで、短い時間に紙を整えてしまう。その手早さと手際の良さに、驚いた。
「ところで、お加減はいかがですか」
「駄目だ、半分死んでいる」
「またあ」
「あのね、黙ったままで刈ってくださいな。小山さんは、喋ると横のところを刈り過ぎるんだ」
「そんなことないですよ、いつも丁度いい形になっているでしょう」
「散髪がおわったときに、鏡を見るとそうなっている、そこはプロだからね。ところが翌日になると、たちまち頭が坊ちゃん刈りになってしまう。六十半ばで、そう言う髪型はないだろう」
 そう言いながら、気付いたことが二つある。一つは、私が多弁になると小山さんも釣られて喋ってしまう、ということだ。もう一つ、動悸がつづいているのに、自分の声が出ている。
 自分の声、という言い方は分りにくいだろう。一年半ほど前から、声が嗄れることが起こりはじめた。そういうときは、たいがい動悸がしているが、そうでないこともある。
 目覚めてからでないと、その日の声の状態は分らない。そして、それには三つのケースがある。

***

きょうは ピアノの早撃ち(こんなことばあるの?)みたいに 急いで打ちました。いつもは咳き込みながら 打ったりしているのに 集中すると
こうなんですかね。
「目玉」と「大きい荷物」しばし待てよ いったいこれはどういうタイトルなの?この本全体のタイトルが「目玉」で いまは「大きな荷物」を読んでいるのだな。
ここでは感想を言うどころじゃありません。急いでいるからです。
で「一年半ほど前から、声が嗄れることが起こりはじめた」
そこのところから はっと 「自分は何年も前からよ」と反応している私がいて この話は 一体一区切りつくのは どこらへんだろうとその道のりを調べてみるとまだまだ倍はありそうなのです。
急ぎ足は 急におさまり 「それには三つのケースがある」というところでとりあえずということになりました。

この話と どういう関係があるの? ん...おそれいりますがこのへんで
字まちがっているやろな。けっこうふりかえってみますと 間違ってる漢字とか あります。よみかえしたりしてるんですが、きょうはそれさえしていないので あいすみません。



《 2018.11.27 Tue  _  読書の時間 》