NEKO美術館 成瀬憲子

布　大きな布は　ほとんどのこっていません

はぎれは　小さな透明なビニール袋に入れて　くちをしばって

出番を　待っているのか　もうあきらめているのか

でも　ときに　こういうふうに登場します

いいなあ（自分で言うことにしています）

まえにも　申し上げましたように　

わたしは　ひろい運が　ついているのです

運というのは　夢中であれ　真剣であれ　続いてしまったあと

やってくるようですね

山のような　はぎれ　ひろい運も　こんどは　それとどう遊ぶかということに

布ですから　糸で縫うとか　はじめのうちは　そういうことしか　思い付きません

でも　いっぱいだと　手の施しようがないというのか（こういう時に使うんでしたっけ？）何年も小分けしたまま　ほっておいたわけです

これで　人形を作る人がいるかも知れません

これで　つぎはぎ帽子を作る人だっているかも知れません

これで　ブローチという手もありそうです

ある日　知り合いの方が　てんとう虫の小さな布による　ブローチを　送ってくださいました　

「ああ　なんてかわいいんだろう！」そう思いました　

年配の方がつくられたそうです

この方は　この小さな布切れで　てんとうむしをつくる　それをどなたかにあげて

もらった人は　手のひらの上の　このちいさなものに　きゅっとなる

いいなぁ

でも　自分は　ひろい運にいい気になるぐらいだから

ああもしたい　こうもしたいと　欲が出て来るばかり

で　いま　人の顔を描いて　それに　布を載せること