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かもめ

かもめ 太宰治 つづき

「おい、お金をくれ。いくらある?」
「さあ、四、五円はございましょう」
「使ってもいいか」
「ええ、少しは残して下さいね」
「わかってる。九時ごろ迄(まで)には帰る」
 私は妻から財布を受け取って、外へ出る。もう暮れている。霧が薄くかかっている。
 三鷹駅ちかくの、すし屋にはいった。酒くれ。なんという、だらしない言葉だ。
酒をくれ。なんという、陳腐な、マンネリズムだ。私は、これまで、この言葉を、いったい何百回、何千回、繰りかえしたことであろう。無智な不潔な言葉である。いまの時勢に、くるしいなんて言って、酒をくらって、あっぱれ深刻ぶって、いい気になっている青年が、もし在ったとしたなら、私は、そいつを、ぶん殴る。躊躇せず、ぶん殴る。
けれども、いまの私は、その青年と、どこが違うか。同じじゃないか。としをとっているだけに、尚さら不潔だ。いい気なもんだ。
 私は、まじめな顔をして酒を呑む。私はこれまで、何千升、何万升、の酒を呑んだことか。いやだ、いやだ、と思いつつ呑んでいる。私は酒がきらいなのだ。いちどだって、うまい、と思って呑んだことが無い。にがいものだ。呑みたくないのだ。よしたいのだ。

***

いややわー こんな酒飲み
家のお父ちゃんは すぐに酒に吞まれる派やったけれども
おんなじことを おーいおーい なんて繰り返しながら のんでたわけなんだけど
この人は 酒はまずいといいながら 「少しは残して下さいね」と奥さんにやんわり
言われながら さすが作家 文になってる
あっ お父ちゃんのことを思い出してしまいました。 お父ちゃんは くりかえしばっかり(しょうもないこと)で 文学性はなかったなあ
 
《 2018.08.07 Tue  _  1ぺーじ 》