NEKO美術館 成瀬憲子

「あかばねさん」　NEKO美術館発

わたしは　私以外の人によくまちがえられるってことを　言ったことがあるんですけど

で　きのうも　まちがえられたんです。

「あかばねさーん」その人と目が合った途端　そう呼ばれたんです

あかばね？　こびと図鑑に出てきそうな名前だなあ　そう思いました

その人は　わたしのところにとんできて　「あかばねさんでしょ　まあ　こんなところで」　そう言うのでした。

わたしは　こういうふうに　よくまちがえられます

それも　とんできて　「あかばねさんでしょ」と手を取られるぐらい

もう　相手の人は　確信してるんですよね

あっ　ちがいます

わたしはいともあっさりと　答えるのでした

「うっそー　あかばねさんじゃないの　じゃあ　あなたなんて名前なの？」

なるせです

「なんせ？」

なるせ

「なるせ　おかしいなあ　このマスクの耳の辺りからここら辺　あかばねさんよねえ」

わたしは　その人が　大きな石のネックレスをしてるのまで　至近距離で見えるのでした

よく　だれかにまちがえられるんです　わたしは　てなれたふうに　言うのでした

「ふーん　ごめんね　あかば...」まだ彼女は　ふにおちないようでした

帰り際　わたしは車の中で　わらいました　このところ　こんなに笑う事も無いので

よかったと思います

　

夫セイにこの話をすると

なんで　そのとき　マスクをとらなかったの　と聞きました

どうしてでしょう

そうだなぁ　きっと　このふんいきを　そのままにしておきたかったのかな　わたし