NEKO美術館 成瀬憲子

「ひとりですわっていると」　NEKO美術館発　１９７０　２０歳

１ページは　こういうところからはじまります。ちいさく（２）と上には書いてあるでしょう。

一人で座っていると気づく。

とってもさみしくなった、と。

Nちゃんところに話に行こうかと思う。

でもラジオで浅川マキという歌手が歌ってる。黒ずくめの衣装で　歌う人。

こりゃあ　ここにいたほうがいいと思う。次にカルメンマキ登場。無表情な顔。

声のイメージと　あわないようなきがするんだけど。

私には広すぎる六畳の学生アパート。何軒並んでいるかなあ。

すぐ前が　大やさんの畑。陽に焼けた叔母さんが　畑を耕している。

窓を開け放って　イラストなんかを描いていると　おばさんは笑ってる。

みんな　デートやお出かけに忙しいのだ　こんなふうに窓辺にてイラストを描いてる子　などいない。

私は大学の寮から　近くのここに引っ越して来たばかり。

絵を壁に貼ってみる。ソフィアローレンの顔が案外うまく描けた。この顔

描けそうで　なかなかだった。フランシスベーコンもついでに思い出す。

どうしてかな。そうそう　ここで絵を描くと背中が痛くなる。

＊＊＊

寮は食事も出るし　おふろもひろい。４人一部屋というのも　２段ベッドにカーテンをして　そこが　個室気分でした。それでも出ようと思ったのは　友達が出たからかな。

わたしは　そういうことがないかぎり　同じところにいるほうですね。馴れるとあきるということがないようです。　家に住み着くネコですね。

浅川マキ　カルメンマキ　あれ　同じ名前だからといって　まちがえたのかもしれない。

私ならやりそうだけど　なつかしいです。そして　その頃の空気が入った　イラストを

よく描いていたのです。　別にどうでもいいのだ　そうですね　カルメンマキのことは。

フランシスベーコン　浅川マキ　やっぱり書いておいて　よかったです　ソフィアローレンも。こういう人の名前は　さっとそのころが　出てくるからでしょうか。

いいことだけを思い出すようにしよう　ちょっと小さな決心をしているところです。