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けったいなアメリカ人

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「けったいなアメリカ人」米谷ふみ子著 集英社

ミラー、メイラー会談傍聴記 つづき

 私は、食堂の壁に掛かっている絵を見回した。華麗な、澄んだ色彩、こんな眼が覚めるような色を最近見たことがない。これがこの眼前の老人から出て来たとは!絵は全部水彩であった。スタイルは、ピカソ風、デュフィ風、マチス風、棟方志功風と一つずつ違う。だが、マチスやピカソやディフィや棟方より色が冴えて純粋である。勿論、彼の本と同じく女の性器が大きく描かれていた。
「この絵、みんな御自分でお描きになったんですか」
「オー、イエス、八十歳になってから描きましたんや」
「目が覚めるみたいに奇麗ですね。みずみずしい!」
「オー・サンキュウ・サンキュウ」
 ミラーはとても誇らしげに顔を柔らげた。
「私、絵描きでしたけど、今は描いてません」
「僕も、今は眼が見えまへんのでな、描いてませんわ」
 この絵、色彩を見て、ヘンリー・ミラーは純粋な人だと思った。隅に掛かっていた絵は
棟方志功の版画風であったが、ミラー独特のもので、女の人を黒い活発な線で描き、落ちついた地味な色であっさりと仕上げてあった。他の絵に見られる派手な色が消えていた。
「これ最近の絵ですか?」
「そうです。最後のです」

***

ミラーの最後の絵 
スタイルは、ピカソ風、デュフィ風、マチス風、棟方志功風と一つずつ違う。
だが、マチスやピカソやデュフィや棟方より色が冴えて純粋である。

そうなのか 私もミラーの水彩画を見たことがありますが 思わずその世界に入って自分も描けそうな気がしますが そうはいきませんでした。そのぽかんとしたところは こうして ふみ子さんの この ミラーのことを読んでみると わかります。
ぽかんとしたところと言ったのは私ですが ミラーの絵にはそんなところありませんか?


ノリコ・リーですよ。ミラーはほんまに面白いですねえ。
で この絵はじつは 一枚版画みたいなもんなんです。古い油絵の具を死ぬまでに使ってしまおう そう思いましてな。これが案外面白いの。以前にはこういうことはよくやっていましたが 今やるとまた気分が 気楽で。
年取ると 気分が気楽になるんですよ それはいいところですね。
こんどこそ 絵の具使い切れるかも知れないと 思ったりね。

小さい鳥見えますか 今日出会った カッコーなんです。
なんども いい声で ながいしっぽをふって ないたんです。



《 2017.07.08 Sat  _  1ぺーじ 》