「けったいなアメリカ人」 米谷ふみ子著 集英社
ミラー、メイラー対談傍聴記 つづき
突然静けさを破って、
「誰が死んだんや?」
一同ぎくっとする。
「マン・レイです、お父さん」
マン・レイはパリ時代以来のミラーの親友である。
「ああ、あいつ死んだんか」
彼はとても冷静に言った。
「マン・レイは九十歳だったんだよ。ダディ」
「ああ、あいつも年とっていたからな」
(次の日の新聞を見ると「八十六歳、ミラーより一歳年上」と書いてあった)
ミラーは何ごとも起こらなかったように、先ほどの話を続ける。
「この二年ばかりなあ、身体が不自由で困ってますねん。眼の前にあるピーナッツを抓まもうと思てもな、抓まめへん。距離が判りまへんねん。(片目では距離が判る筈がない)眼が見えんので本が読めまへん。これが一番情けないことですわ。物を書くのは書けます。それでもな、前からの習慣で、新聞だけは朝食の時読みます。他はトニーが読んで推めてくれたもんだけですわ。はあ」
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マン・レイのことがでてきましたね。女性の背中はヴァイオリン いえねこれは本当のタイトルじゃなくて わたしのなかにのこってる マン・レイの作品の一つです。アメリカ人でしたよね。パリで活躍して あのキキという色っぽい女性とも 結婚してましたが
離婚してます。マン・レイという人は 写真家でもあったんですよね。で 自分でものをつくって その写真を撮った。わかりますねえ レンズの中の世界は 一つの作品よ ほんま。
マン・レイはミラーの親友だったんですね。
パリにはアメリカやイタリアや日本 いろんな国からパリにやってきて そこは彼らにしたら異国 で2人は親友になったんですかね。 彼らはどんな話をしたんだろう。
今 みなさんと読んでいる「ピカソとその周辺」のように そんな会話がのこっているといいですね。
ここでは「ああ、あいつも年とってたからな」でおわっていますね。
耳の遠いミラー 地獄耳じゃないですけど 聞こえたんですね。 ミラーの年齢になるとあちことから 亡くなったという知らせが はいってくるんでしょうね。 それはとってもがっかりすることだったのでしょうね。
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さて私のばんです。どんな絵でしたっけ? ああこれですか。いちど出しませんでしたかね?
近頃は 同じことを何度も言ったり 出したりします。 ミラーは「眼や耳が調子悪い」とぼやいていましたが。 はてわたしは そうやそうや「記憶の精」ですがな。いや いま「精」と書きましたな。
そうですか これはまちがいではありません。
眼や耳や記憶には 年いくと「精霊」がつくのではないでしょうか。 そいつがね まじめなことがきらいでね とくに昔まじめやった者には こないして まぬけなことを させたがるんですわ。これはわたしについた精霊の話だっせ。ミラーはんは ちがいますもんなあ。
この作品の話にもどりますけど キリンのハイネックさん ぴーさん おげんきですか。で 人間ばかりじゃなくて動物にも 宇宙を見せてやろうというので 精霊がね キリンにも 宇宙船に 乗せたってわけですわね。
さいならさいなら