「けったいなアメリカ人」米谷ふみ子著 集英社
ミラー、メイラーの会談傍聴記 つづき
それから、やおらポケットから眼鏡を取り出し、鼻にかけて、人の顔を眼鏡越しにじろりっと観察するのである。さすがは達人!ああ、絶世の美女でなくて悪うござんした。
約束の一時になっている。電話が鳴った。
「あ、そうですか。はいかしこまりました」トニーが返事をしている。
ミラーが、
「誰や?」
と問う。
「メイラー氏がね、少し遅くなるからと言って来たんだ」
「どこから掛けて来たんや、ニューヨークからか?」
と皮肉を言う。
「ベヴァリーヒルズ・ホテル」
それを聴いたディック、
「ノーマンの奴、また、この調子だ。あそこに居るって知ってたら一緒に連れてくるんだったのになあ」
ジョシュがミラーに訊ねる。
「パリセード地区がお好きなのでここに住んでおられるんですか」
「ここ?ここは嫌いです。この近所はな、なんや葬儀場のような雰囲気があってな、わしには合いまへん」
芝生や植えこみが余りにも一糸乱れずという状態であることを言っているのだ。
***
「葬儀場のような雰囲気があってな、わしには合まへん」
ミラーがいうと そのビバリーヒルズの(ベヴァリーヒルズでしたなあ)とりすました
高級住宅街の きれいに整えられた ちょっと息のつまりそうなところだろうなあと。
だんだん ミラーのことがわかってきますよね。
*
さて 名作は名作におまかせして 私のやったことを見てちょうだいな。
この写真はねたしか この地方の(私がいる所から車で数十分でいけるところ)
山あいの 人家もあまりない所です。
道は私達を なぜかなつかしい気分にさせてくれます。これからもずっと 道は自分の前に後ろにあるようでね。
しばらくあるくと パッと明るい陽ざしの所に出る時もあるんです。すると私達は立ち止まって こしをのばしたりしながら 一時の休憩です。