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けったいなアメリカ人

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「けったいなアメリカ人」米谷ふみ子著 集英社

ミラー・メイラー会談傍聴記 つづき

 我に返ってふと台所を見ると、薄暗い中に車椅子に寄りかかって、痩せた小さい老人が、よじれた白いシャツを着て、ぼうーと立っていた。
「あっ!」ともう少しで声をあげるところだった。やっぱりこの人だったんだ。あのときはもっと大柄で、顔にも肉がついており、老人にしてはエネルギッシュにがさがさと前かがみに歩いていた....。
 ある冬の日、買い物を終えてスーパーを出ようとした時、スーパーの入口の新聞販売機の前でうろうろしている老人を見つけた。茶色と白の格子のオーヴァーに、赤い羽根をつけたチロル・ハットを被っていた。
「あの人ヘンリー・ミラーとちゃう?」
 と買い物に一緒に来たジョジュに私は訊いた。
 彼はあっと言う間にその老人の後をつけてスーパーに入って行った。ジャーナリストの厚かましさを持った自分の夫に、いつものことながら当惑を感じ、私は自動車の中で子供と一緒に待っていた。一、二分後、ジョシュはあたふたとしてスーパーから出てきた。
「君、本当にあの人ヘンリー・ミラーだと思ったの?人違いだよ。あのお年寄り、即座に、"ノー"と言ったぜ」
「なんて訊ねたん?」
「失礼ですが、あなたはヘンリー・ミラーと違いますか、と言ったのさ」
「ふうん、煩わしいからわざと嘘ついてはんのやわ」
 それからも、老人をそのスーパーで再三見かけたものだった。そして、いつの頃からかぱったり見なくなってしまった。

***

「失礼ですが、あなたはヘンリー・ミラーと違いますか、と言ったのさ」
ヘンリー・ミラーの玄関のドアに 書いてあったことが よみがえりますね。
ふみこさんの「ふうん、煩わしいからわざと嘘をついてはるのやわ」
ミラーを見つけたのもふみ子さん 夫のジョシュはあっさりと 人違いと認めたのに
それは嘘やわと思ったのもふみ子さん。ま それでそのスーパーで何を買ってたんでしょうね。


さてノリコ・リーの絵は これはなにだ?なんだろうな。"ノー!ノリコ・リーではありません" このところ 自分の絵でも何か分からん絵にひかれたりして。

《 2017.06.09 Fri  _  1ぺーじ 》