入選することを祈ってる 1970(21歳)
だれかが わたしを 認める。
尊敬する。
要するに わたしをバカにする人間が減るということ
今わたしは本当に 入選することを祈っている
神様の意志がどうであれ 画家の精神とかに反しようとも
入選したい
そして あの 上野公園を走りまわってみたい
*
2010年61歳
独立美術展に出した 小さな写真入れの中の作品
「ぜんち内供の鼻」(芥川龍之介の小説による)
クレパス画 はじめての出品作
その後わたしはどうなったのだろう
どう考えるようになったのだろう
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1970年(21歳)
今は有名な画家である人々
彼らは わたしのような一瞬を持っただろうか
はじめて入選をしたとき 彼らの顔はどんなだったろう
おそらく一瞬 このことを 願いはかなったと喜んだのだろうか
画家も生の人間であり 有名になるまでの執念そのものなのだろう
たいがいの者がそういう道をたどって 大きくなっていくのだろうから
*
2010年(61歳)
わたしの執念とやらは 長続きしなかった
だけどそれは有名になると言う執念で 面白い絵をかきたいとか
そういうことは あんがい気楽に続いたように思う
たまには「すごいやん!」といわせてみたいもんだと思うけど
長年住み慣れた この「気楽ときたもんだ」がいこごちがよくなってる
面白いことが一つある
わたしは61歳になっても 「いっしゅん」という漢字を まちがえる
どっかが欠けていたり 多すぎたり
日記のなかの「いっしゅん」は2、3ちがう
どこがちがうのか たしかめないまま 書いている
そうそう あのとき 「ぜんち内供の鼻」は落選した
よかったことは もってかえるのが 軽かったことだ
こわきにかかえてね