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せいすい

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笑ってしまった話  1984(35歳)大阪時代


 画材屋のKさんが宗教団体に入っていて 手をかざすと 病気がなおると教えてくれた。
親戚に重病の人がいるというので 夫は真面目にKさんの話を聞いている。
Kさんは夫にまず 手をかざしてみる。Kさんは「かしこみかしこみ」といいながら リズムをつけて 教典片手に読み始めたんだけど どういうわけかうまくいかない。そのリズムが思い出せないらしいのだ。
「あれっ おかしいなあ あれっ どうも調子が。本堂でみんなとやってるときは ちゃんと言えるのになあ」
 私はつい ふきだしてしまった。お経とかは一人でやるよりも何人もで言う方がリズムにのりやすいものかもしれない。 まじめそうなKさんはあいかわらず調子の抜けたこえをあげていた。声があがったりさがったりするのが更に私の笑いを引き出した。
Kさんまで 笑っている。
「あっちへ行っとれ」
夫はKさんに失礼だと思ったのだろう 私を別の部屋におしこんだ。
夜の11時だ。
それから夫はKさんから首から下げるペンダントのような物をもらう。シャツにジーンズの夫の胸にかけられたそれは 不釣り合いに見える。
でまた私が笑ってしまった。

しかし このKさんのそれは わが家でしばらくブームになった。
せいすいとかいうみずを これはたいしたみずだというので 親戚の人に飲ます前に 家でも試してみようというので 子どものおでこにぬってみることにした。なにせたいしたみずだから ちびちびけちって手のひらに出すつもりだった。ガーゼにのせようとしたらガーゼにのらず 私の手のひらに乗ってしまった。「あっ」とガーゼに移そうと思ったら
座布団の上にこぼれてしまった。あわてたなあ。
ざぶとんを私のおでこにあててみたり頭の上にのせてみたり おおさわぎ。


これには後日談がある。
せいすいに関しては大切な約束事があった。それを守らないと 効力はないということらしかった。 夫が温泉に入る時 かごにぽいと置いたからだったと思う。どうやらちゃんとした置き方があるらしかった。 かくしてそれはあっけなく終わった。
私は 子どもらが熱を出したりすると あのときのように手を子どもの額のところにかざしたりしたものだ。ぐずっていた子どもがすやすやねむったりすると 「ふむ 効いた」と思うことにしていた。 腰やら 背中やら 「効きまっせ」といいながらさすってあげると「効いた!」などという人もいた。
Kさんは本当に親切な人だったな。ありがとうございます。まだ忘れてませんよ。

《 2015.07.29 Wed  _  エッセー 》