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『印象派時代』福島繁太郎著 光文社 昭和18年の続きです。
「サムライ・コスチューム」のロートレックは 河出書房の「ドガ・ロートレック」の中にありました。1964年に出ています。


ドガとロートレック

 ロートレックは種々の意味において、ドガとしばしば比較される。すべて動きのあるものを好み、またその反対に動きのないものには極度に無関心を示した事は、両者の共通の特徴である。彼は踊り場、寄席、サーカス、芝居などを好んだが、芝居も筋などはどうでもよかった。気に入った動作があれば同じ芝居を毎日見にゆくという有様で、動作には特別の神経を持っていた。
 動作を絵画に表現する技術にかけてはドガは希代の名手といわれたがロートレックもこれに勝るとも決して劣らざる技術をもっていた。サーカスを主題にしたリトグラフなどを見ても実にきびきびとしてよく運動感が表現されている。このきびきびとした運動感こそ、その性格描写とともに、彼の芸術の二大長所であって、このためにロートレックの名を不朽ならしめているものである。
 ドガは画家であるよりむしろ卓抜なる素描家であると云われたが、ロートレックは、それ以上に素描家的素質が多い。油絵の場合においても、絵の具を太い線状のタッチで、コンテかパステルのごとく用いていて、油絵というよりもむしろ色のあるデッサンという感じである。
 ロートレックもドガも、その線を生命とする事は変わりないが、ドガの線が常に意志に左右され、決して興に乗って走り出す事なく、厳粛の極致であるのにたいし、ロートレックは、興到らば一気呵成(いっきかせい)に描き下し、その線は奔放を極めていて、ドガの線とは全く性質を異にしている。その作画態度も、ドガの追求に追求を重ねてゆくのとは大いに異なり、即興的である。ロートレックは、印象派に負う所少しと云われているが、その作画態度の即興的な点において、むしろある時代に親交のあったゴーグなどと共通のものがあるように思われる。
 ドガもロートレックもともにリアリストではあるが、ドガは現実の古典の風格を求めて常に彼自身には満足せず、自身に対して最もきむずかしやであったが、ロートレックには、古典的な端正はなく、気軽に現実感を表現的に描いて満足していた。そのテンペラマンにおいて全く相反するものがあった。
 都会の画家である点において、ドガもロートレックも一致しているが、ロートレックは常に都会の画家というよりもモンマルトルというパリの特殊な地域の画家であった。彼のモデルはほとんどすべてといっていいほど、モンマルトルに限られている。彼のモティーフがモンマルトルに限られたばかりでなく、彼の作品が最初に鑑賞されたのもモンマルトルであった。彼の作品はモンマルトロアによって愛好せられ、最も大衆的な劇場のポスターに彼が腕を振るう事ができたのは、この時代の良質の画家が、一般の無理解のために厭迫を蒙ったのとは趣を異にしている。
 丁度、彼がここに居を定めた頃から、パリの盛り場として起こり、そしてあたかも彼と運命を共にするが如く、彼の死去とともにその全盛と特殊の空気を失っていったモンマルトルは、彼の芸術と不可分の関係にある。

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気にいった動作には特別に関心を示したということでは ドガとロートレックはよく比較されたそうですね。ここでは比較がよくなされているようです。比較 このまったく生きざまのちがう二人がどういう内容のものを描いているのか。それが興味のたいはんをしめている私ですが どういう描き方をしているのかということを比較するというのは、いまいち意味がわかりません などとすねている私です。
とはいうものの ドガはじっくり興に乗って走り出す事なく厳粛の極致、ロートレックは興いたらば一気呵成に描き下し、その線は奔放を極めている。これにはなるほどと感心してみせる私です。
ドガの場合はなぜかその描き方に目がいってもいいかなと思ったりします。
ドガは油絵というよりもむしろ色のあるデッサンという感じである そうか絵画は どういう気持ちで描いたのかもありますが 描き方のこともあるのですね。「あたりまえだよ」ですか。
この印象派時代というのは かっての技術的な事をおろそかにすることはないという時代とはちょっくら違っている時代に入り始めてるんじゃないですか? だから私のようなこと思ったりするのが出てくるんじゃないでしょうか。絵の描き方のイロハを知らないと とうてい描けない絵画 ともすれば好きであれば描けてしまいそうな絵画 違いはありますよね。私は後者だと思いますが そうなると技術のところにはあまり関心がないという人間も出てきそうです。そうなると何故描くのか どういうところにこだわってるのか その背景にあるものはと関心は移ります。でも そこばかりだと 「もうちょっと うまい絵がみたいわ」と思うようになるのかもしれないし。
モンマルトルの中で描いたロートレック そこの空気をすって 描いた。
そうなのか。運動感という言葉も。

さいならさいなら

《 2015.06.29 Mon  _  ちまたの芸術論 》