Sちゃんからの１９８４年のおたよりです。
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やっと暑くなって夏が来た。梅雨はなく 水道が米子から来るようになったので 水の心配はありませんが ちょっと離れたところでは 水不足で困っています。 水道が来る前ならとっくに水騒動で 美保関中が大騒ぎしているのに 水道のおかげだと 皆が喜んでいます。
この２、３日前までは涼しいというより 寒いくらいで ふとんを冬のままにしていました。
毎日眠る前に 『むかで』の心配でふとんをはぐってよく見てから寝る状態です。
今までに何回もむかでの洗礼を受けています。
一番最初は 明け方ふとんの中に足の方から入ってきて 足のところを歩き回っていて 飛び起き びっくりして 父をよんでたたいてもらって。 それから風呂の中でサアこれから体を洗おうと思って ガザガザのタオルをひざの上において 石鹸をつけようと思ったら 中で動く物がいたので びっくりして タオルを取って投げたら 風呂の中にタオルごと入ってしまって そしたら１０cmくらいのむかでが湯船の中で泳いでいました。
あわてて母を呼んで取ってもらいました。
何分も素手で防備のない身 風呂の中で どうしていいやら分からず 本当に恐怖心の（）くものです。これが二回。
これも明け方ですが ポタッ ガサガサガサガサ 飛び起きてみると 枕元をはいまわっていた。それから手の上を何かガサガサ通って行くので起きてみると これもむかで。朝起きてみると薬によって ひっくりかえって のたうちまわっているのが 何回か。
これはおばあちゃんが薬をまいているのでこういうふうになります。
毎日毎日 むかで むかでと思いながら寝ています。
意識の中にむかでのことがひっかかっているので 何か違う気配だと 飛び起きるくせが着いたおかげで 私はまだかまれていません。
近所の人は『私の家なんかムカデは はえがいる程いてる』といっておられます。
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Sちゃん スリラー、ちゃうおたよりありがとうございます。
ムカデにしても サソリあたりにしても まるで人間に嫌われる為にいるみたいですが 私も出会いたくない相手です。でもSちゃんの語り口がうまくて（これおかしい？）笑ってしまいました。笑うとこじゃないよなあと思いつつも いっしょになって逃げ回ってる自分がおかしいというか。
うちのお母ちゃんが 兵庫のお父ちゃんの生まれ故郷で戦後住むようになったんですが この田舎もムカデは出ていました。私はまだ刺されたことがないんですが お母ちゃんはあります。だからムカデを見ると 逃がしてなるものかと 追っかけ回していました。私だってそんな親を見ているので とことん。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」でしたっけ？サソリがせめて人の役に立ちたいといって火の中に飛び込むシーンがありましたね。思い出したいよー！こんなだいじなシーンなのに。ぴーさん 教えてください！ このお話が私には不思議でだったんです。でも むかでだって そう思ったかも知れないなと。
こんだけ人に嫌われたり 恐がられたりしたら 「こんな姿で生まれてきたばっかりに」と落ち込むだろうな 私だったら。
だからサソリは人の役に立ちたかったのか と感心しているところですが 宮沢賢治さんどないなんでっしゃろか。
笑い続けてこのおたよりはおしまいになるところだったんですが、どこをどうしてかここのところに来てしまいましたよ。
Sちゃんのところにはムカデを油かなんかでつけた「塗り薬」もありましたね。 毒を毒で制するというわけなんですかね。 家族みんなして ムカデ大騒ぎなんだけれども そこがふるさとで 一番落ち着けるところなんですよね きっと。「住めば都」とはよくいったものですね。 こちらでは「すずめばちのアルコールづけ」もみたことがありますけどすずめばちもこわいはちですよね。なんもないところはないんでしょうね。
あのね お母ちゃんがこういうはなし うまかったんですよ。 美保関遺伝子でしょうか。 Sちゃんの この手紙で 笑いすぎました。
おたよりおまちしてます