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おたより

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父からの1972年の手紙です。
私はこれら父や母からの手紙は とってありますが 「読みたくないなあ」と思ったものでした。そこにはお見合いの話など「ああめんどくさいなあ」というようなことがしっかりと綴られていたからです。23才の頃です。この布に描いた絵はまさに親子の見取り図のようなものです。


のりこさん どうしていますか 梅雨空ですので健康に注意しなさい。
Yさんの釣書が来ました。家庭はよいと思う。身長も父くらいで低くない。私も兵隊検査合格の寸法で 父より五cm高いので普通だ。 それよりも人物が温厚で誠実であればよい。
てるさんが(母の弟)大変世話してくれているので一度お見合いをしましょう。
親としても一度見ておきたいので、てるさんのほうへ申しておいてください。 七月はいろいろ忙しいので八月がこちらはよいのです。しかしいつでもよろしい。八月九月のいつか見合いをしましょう。
本人どうしですので意気があえば一回でもよし ことわってもよいし 自由です。
いいかげんなのをいいかげんな人の恋愛などで一生を定めてはいけません。本人は一番大切だが家全体の人々と結婚することにもなるので マイホーム主義ではなりません。
環境が自然にも大切なように親兄弟の人間関係も非常に大切な要因です。
ボーナスが出た様ですがいろいろ金も必要なのでよく貯めておいて下さい。
やすし(兄)のところへも一度行きなさい。やすしもこの間ます釣りに友だちと来て一泊しました。近くの兄はやすしですのでよく相談しなさい。きょうだいが一番大切ですよ。
とにかく見合いの時参ります。仕事は忠実にしなさい。
のりこさま                       父

***

お父さんお手紙なつかしく拝見しました。
お父さんの字は筆圧がものすごいです。 兄のひとりがお父さんの筆圧の遺伝子を受け継いでいて ラブレターだってなんだって送った後も下の便せんにのこって読めてしまうというあんばいだったそうです。 「文は体を成す」とかいうそうですが この殴り書きといい筆圧といい なんか頑丈で大きな人という感じがするのですが そうではなかったですね。 兄は「ごうけつ」といわれるぐらいでしたからこの筆圧はわかるような気がしますが。 お父さんは強い人間を求められる時代の人だったから 強くなろうと こんな感じだったのかも。 私はすでにお父さんが亡くなった年齢に近づこうとしています。 一人の人間としてお父さんを発見するというのは 興味深いことです。

さて父のこの手紙ですが 今の私は親が子供にあてた 「一歩譲って 本当は譲らず」の文面だと思います。 笑ってしまいそうなんだけど 「笑う所ではないぞ」とも言われそうです。 私はその頃「親からすれば素直ではなく 自分としてはとても素直」でした。
きちんと見える服装をせず 普段着でお見合いにのぞみました。 ぺったんこの靴をはいて服はそのころのスモックのブラウスとスカートだったかもしれません。 私はこれが一番似合うと思っていたのですから。 それは叔父さんはともかく(笑っていました)親たちをがっかりさせるものでした。
親は遠く兵庫の田舎から何時間もかけて この末の娘の為にやってきたのです。
私は迷惑だけどそんな親をおしきる勇気もない そんなところでした。
この親子の思ってることの違いはどうでしょう!
「いいかげんな恋愛などで一生を定めてはいけません」と父は言っています。
「いいかげんなんかじゃありません。ゆっくり恋愛をしようと思うのに そんなときどうしてこんな厄介な話を持ってくるのよ。 あわてさせるからまた失敗。 あわてさせるからよ 恋愛に失敗したのは!」私は言いたかったわけで。 
でも今から考えると 親はよくあんなめんどくさいことに 何度もつきあってくれたなあと思います。お見合いという制度があるから じっとしてられなかったのかなあ。 私は親が40代の時に生まれた5人目の子供なので 親は「この子を早く嫁にやってゆっくりしたかった」のです。
「本人も大事だが家全体の人々と結婚することにもなるので マイホーム主義ではなりません」と父は書きました。 そのとうりですが まえもっていいことばかり考えないと 結婚なんて出来ませんぜ(笑)。
「お金も無駄遣いせずに 兄弟仲良く 仕事はしっかり しかしとにかくお見合いの時には参ります」とまとめています。
「家庭はよいと思う。身長も父くらいで低くない。私も兵隊検査合格の寸法で 父より5cm高いので普通だ それよりも人物が温厚で誠実であればよい」 これは時代を感じさせますね。 父の身長は低かったです。 朝礼の時(校長先生だったんです)背伸びして話をしていたのをよく覚えています。 笑ってじーんとくるのは年のせいでしょうか。

私がやっと結婚できたのは この日からまだ数年を要しています。親はくたくたにつかれ
私は結婚運はないとカンネンした頃 結婚のはこびとなったわけです。

「集団お見合い大作戦」 今テレビで見ることがあります。結構それぞれに相手を決めています。 あの雰囲気の中では 「きめるぞ」と思えるんでしょうね。 私が経験した1対1の親付きのお見合いより 「進化してるな」と思います。

うちの子いい出会いあるんやろか。なんか心配になってきました。お見合い大作戦に親の私が出て 「よろしくお願いします」とやってる姿を想像してしまいました。

お父ちゃん 長い間ありがとう このお父ちゃんの必死の手紙 今ようやくわかるようになってきました

《 2015.04.10 Fri  _  エッセー 》