NEKO美術館 成瀬憲子

のりばあ（N)　２０００年１２月１１日は　なにをしていたかなあ

めもりさん（M）何一つとして思い出せませんね

（N)　でもこの写真をうつしたことはたしか

（M）そうですね

（N)　そこらへんかいわいには　新聞の切り抜きがあります

（M）とてもしわだらけのおばあさんの記事

（N)　「画家・大道あやの姿を追う」という見出し

（M）にんげんドキュメント

（N)　素朴な絵と人柄で多くの人々を魅了する日本画家・大道あや（９１）。大道が描くのは身の回りの出来事や動物など、日本の原風景ともいえる絵だ。まったく絵画の技法を学んだことのない大道は、心の赴くまま、かきたいものをかきたい時にかく。埼玉県北部の山の中で暮らしている大道のもとには、地元の人やファンが口コミで集まって来る。大道の十年ぶりの創作を軸に、人々との交流を通して天真らんまんに生きる"自然児"画家・大道の姿を追う。

（M）へえー！のりばあもそんなふうに生きてみたい？

（N)　家族の事も　みんなのことも　ぽーんと忘れて

（M）９１才で丈夫そう

（N)　きょうの夢はこれ。うめぼしとじゃこだけとご飯だけで　山の中で

（M）救急車は間に合わなくて　あっという間に　あちらの世界へ

（N)　Sちゃんの手紙で　そんなこと書いてありましたねえ

（M）新聞に孤独死と

（N)　そうか・・このおばあちゃんなら　「いいよ」「死ぬ時はみんな一人だ」と言いそうだね