昔、実家には妹のアップライトピアノがありました。私はピアノを習ったことはないし、うまく弾くこともできませんが、それでもピアノの音がとても好きで、耳で聞いたフレーズをなんとなく弾いて楽しんでいたりしました。
あれは中学生の頃。「黒鍵だけ弾いていれば坂本龍一のメロディーっぽくなる」という話を誰からか聞いて、試しに弾いてみたところ、たしかにそれっぽくなったことがうれしくて、ずっと黒鍵ばかりを弾いていた記憶があります。そして、今でも時々やります。
西田敏行の『もしもピアノが弾けたなら』という歌がありますが、私はまさにあの歌詞のとおりで、ピアノを弾ける人のことが心から羨ましくて仕方がありません。ピアノが弾けたら何もいらないなとさえ思います。
今、私の部屋にはそれなりに立派な電子ピアノがあります。今のおうちに引っ越しをしたときに一念発起をして買ったのですけれど、全然上手くならないし、まあ、ろくに弾いてもいません。話が矛盾しているように感じますが、まあ、そんなもんです。それでも時折ピアノを触ってみると、「ああ、やっぱりいいなあ」と思います。
いつか、宮沢賢治の『星めぐりの歌』や、高畑勲の『わらべ唄』のような曲を、死ぬまでにつくってみたいなあと思いながら、ちょっとだけほこりがかぶったピアノをきょうも見ているだけでございます。
まあ、なんということはない。坂本龍一が亡くなってしまって、とっても寂しいのです。音楽はすばらしいです。
◎【Today’s Memo】は平日の毎朝8時に更新。atelier naruse 代表・早川による、ちょっとしたエッセーのようなもの、です