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モームさん

スキャン4805.jpeg『月と六ペンス』

「君の昔なじみを連れてきたよ」ストルーヴはいきいきと顔を輝かせて、そう繰返した。
 ストリックランドはものの一分近くも、じっと考え深そうに私を眺めていた。私は何も言わなかった。
「一度も会ったことのない人だ」と彼は言った。
 何故そんなことを言ったのかわからない。何故なら、私はたしかに彼の目の中に私が何物であるかわかったらしい動きを見てとったからだ。数年前の私とはちがって、もうたやすくは気まり悪るがるようなことはない。
「先日奥さんにお会いしました」と私は言った。「奥さんの最近の様子をきっとお聞きになりたいと思いましてね」
 ストリックランドは短く声を立てて笑った。彼の目はきらきら光った。
「一晩一緒に愉快にやったっけ。あれはどのくらい前のことだったかなあ?」と彼が言った。
「五年前」
 彼はアブサンをもう一杯注文した。ストルーヴはよく廻る舌で、私と会ったいきさつや、お互に
ストリックランドを知っていることを発見したきっかけなどを説明した。ストリックランドは、はたして聞いているのかどうかわからなかった。考え込んだ様子で私の方を一、二度ちらと眺めたが、殆どは自分自身の思いにふけっているらしかった。そんなふうだから、ストルーヴのおしゃべりがなかったら、会話は難行
したにちがいない。半時間たつとオランダ人は、時計を眺めて、もう行かなくちゃ、と言った。一緒に行くかと、私にたずねた。私は、独りになれば、ストリックランドから何か引き出せるかも知れないと考えて、後に残ると答えた。
 肥った男が立ち去ると,私は言った。
「ダーク・ストルーヴはあなたのことを偉大な芸術家だと思っていますよ」
「そんなくだらんこと、どうだってかまやしない」
「あなたの絵を見せてくれますか?」
「何故見せなきゃならんのだね?」
「一つくらい買いたいって気になるかもしれない」
「こっちは売りたいって気にならんかもしれん」
「暮らしむきはいいんですか?」と私はほほえみながらたずねた。彼はくっくっと笑った。
「そう見えるかね?」
「半ば餓死状態に見える」
「半ば餓死状態なんだ」
「じゃあいらっしゃい、ちょっと夕めしを一緒にやりましょう」
「何故招待してくれるんだね?」
「気の毒に思ったからじゃありませんよ」冷ややかに答えた。「実のところ、あなたが飢え死しようがしまいが、私はへとも思っちゃいません」
 彼の目は又いきいきと輝いた。
「じゃ、行こう」と彼は立ち上りながら言った。「飯らしい飯がくいたい」

「ダーク・ストルーヴがストリックランドのことを偉大な芸術家だと思っていますよ」
「そんなくだらんこと、どうだってかまやしない」
「あなたの絵を見せてくれますか?」
「何故見せなきゃならんのだね?」
「一つくらい買いたいって気になるかもしれない」
「こっちは売りたいって気にならんかもしれない」
「暮しむきはいいんですか?」
「そう見えるかね」
「半ば餓死状態に見える」
「半ば餓死状態なんだ」
「じゃいらっしゃい、ちょっと夕めしを一緒にやりましょう」
「何故招待してくれるんだね?」
「気の毒に思ったからじゃありませんよ」「実のところ、あなたが飢え死しようがしまいが、私はへとも思っちゃいません」
「じゃあ、行こう」

 彼は五年前の彼ではなく このストリックランドという男にふりまわされることもなく 会話していますね。最後の「あなたが飢え死しようがしまいが、私はへとも思っちゃいません」ここのところでストリックランドの気持をつかんだんでしょうね。 とりあえず彼と食事をするところまでいきます。
こういうのは演劇の中の会話のようですね。

母が残した布です。これは何の布かというと わからんかったりします。母に生前聞かなかったからです。
蒲団用じゃないかな とか。このような布は最近見ませんね。ざらざらしています。
さむいなあ、4月だというのに。

《 2021.04.15 Thu  _  読書の時間 》