NEKO美術館 成瀬憲子

このはなしは　一度となくしましたか？

ま　いいですね

まだ小学校に上がっていないころ　私は父に連れられて

神社の宮司さんの所に行きました

父は中学校の校長先生で　お祭りの日には　宮司さんをたずねることもあったのでしょう

私はほんのこどもでしたから　父の自転車の後ろに乗って　ついていったのです

その頃私は　でべそだと思われていました　だからでべそじゃない今の自分は

考えられないことなのです

父と私は　社務所に上がらせてもらい　父は宮司さんと　にこにこと　何やら話が弾んでおりました

私は退屈というより　そこに出されているお菓子が気になってしかたがありませんでした

そのうち　ほしくてしかたがなくなりました

そこで　私は　こっそりのつもりで　お菓子をポケットに入れはじめました

宮司さんに　お菓子を沢山下さいとは　言いませんでした

やっぱり父と宮司さんは話が続いているので　お菓子をポケット一杯に入れました

私は　このことをおぼえています

大人になりますと　わかってきます　

宮司さんはにこにこ顔でしたが

きっと　私のやっていることを知っていたのでしょう

透明人間じゃないのですからね

子どものわたしは　よく　だまって実行するのでした

考えてみれば　いまもそのくせのようなものは　わたしの中にありそうだと思います

こっそり

ごみひろいだって　一人で考えて行きました

最近　こっそりじゃなく　言葉に出して　物を言う練習を　しているところです

これも気持ちがいいです

絵だって　自分で考えるというより　画家たちの色使いを知って　描いてみようとしています

これは　たしかに　私にはなかった要素なんです

もう子供のころからやからなあ　なおらんわ

とか言いますよね

なおらんかもしれないけど　一部　かえてみることは新鮮です

お客さん　どうです？