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こういう時がいちばん
母がのこしていったもののなかに ちりがみがある
１９９４年の終わりに母は亡くなっている
このちりかみは いまごろ売っているのかなあ おおきなたばになっていて
よくいえば縮みの地 わるくいえば ざらざら
それを物置に置いていたんだけど このたび日の目を見ることになったよ
「お母ちゃん」
わたしは最近どういうわけか 絵の練習をしている
いままでは 自己流もいいところで それが個性だとも思っていた
それはいいんだけど 油絵の具がほってあるし それはもったいないから
ちゃんとつかってから 死にたいと いつも思っていたのを とうとう
実行するに至った こう書くと おおげさなんだけど
どうせ 色をのせるなら 自分の絵はがき あんまり売れなかったから
その裏に きれいな色彩を勉強して のせてみたくなった
いろんな色彩の天才たちの画集が 先生
何の話でしたっけ？
そうそう 母の残したちりかみは 紙粘土を包んで良し 油絵の具のナイフを
きれいに拭い取るにもヨシ 途端に光ってきた
ときどきはなもかむけど それでなくても弱っている肌には あまりよくなさそうだけど
自分は つまり アートもいいけど こういう時がいちばんだと思うな
《 2019.10.16 Wed _ これくしょん 》